洋書に出てくる英語表現0194:push the envelope【おすすめ英語フレーズ編174】

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「洋書に出てくる英語表現」の第194回は、英語学習や英会話に役立つ【おすすめ英語フレーズ編】の第174回として「push the envelope」を取りあげます。

目次
  1. Push the envelopeの意味と由来
  2. Push the envelopeの英語による定義
  3. 洋書におけるpush the envelopeの出現頻度
  4. Push the envelopeの年代分布
  5. Push the envelopeの出現パターン
  6. 洋書内の実例
    1. 実例1(パターン1):iCon: Steve Jobs (2005)(邦題『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』、ジェフリー・S・ヤング + ウィリアム・L・サイモン = 著)より
    2. 実例2(パターン1):Letters to a Young Gymnast (2004)(邦題『コマネチ 若きアスリートヘの手紙』、ナディア・コマネチ = 著)より
    3. 実例3(パターン1):The Facebook Effect: The Inside Story of the Company That Is Connecting the World (2010)(邦題『フェイスブック 若き天才の野望 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた』、デビッド・カークパトリック = 著)より
    4. 実例4(パターン1):Jony Ive: The Genius Behind Apple’s Greatest Products (2013)(邦題『ジョナサン・アイブ:偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー』、リーアンダー・ケイニー = 著)より
    5. 実例5(パターン1):LIVING HISTORY (2003)(邦題『リビング・ヒストリー:ヒラリー・ロダム・クリントン自伝(上・下)』、ヒラリー・ロダム・クリントン = 著)より
    6. 実例6(パターン1):NIGEL MANSELL: My Autobiography (1995)(邦題『全開 マンセル自伝』、ナイジェル・マンセル + ジェイムス・アレン = 著)より
    7. 実例7(パターン1):The Yankee Years (2009)(邦題『さらばヤンキース:我が監督時代』、ジョー・トーリ / トム・ベルデュッチ 共著)より
    8. 実例8(パターン2):TOM CRUISE: AN UNAUTHORIZED BIOGRAPHY (2008)(邦題『トム・クルーズ 非公認伝記』、アンドリュー・モートン = 著)より
  7. Push the envelopeのまとめ

Push the envelopeの意味と由来

直訳すると、「封筒を押す」となります。

このenvelopeは「封筒」ではなく、航空機が安全に飛行することのできる速度や高度、荷重の「限界範囲」を意味する「フライト・エンベロープ(飛行包絡線)」のことを指しています。

航空機の速度や高度、荷重がこの限界範囲を逸脱して飛行すると、操縦不能に陥ったり、故障に至るため、航空機は安全性確保のためにこの限界範囲内で飛行するのですが、飛行テストなどで敢えてこの限界範囲のギリギリのところを攻めたり、時には限界範囲を超えて飛行する様子から、「push the envelope」は「限界に挑む」を意味するフレーズとして広く使用されるようになりました。

つまり、この限界範囲を封筒に例えると、封筒の内側は安全な領域、封筒の外側は危険な領域を表していますので、封筒を外側から押しているというよりも、封筒を内側から押し広げているようなところをイメージすると、この表現のニュアンスをつかみやすいのではないかと思います。

日本語では「限界に挑む」のほか、「限界を押し広げる」や「既成概念を打ち破る」、「既成概念の枠を超える」、「可能性を広げる」、「ぎりぎりを攻める」などと訳されます。

Push the envelopeの英語による定義

extend or go beyond the normal limits

洋書におけるpush the envelopeの出現頻度

AAA[超高頻度:極めて高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]

(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)

Push the envelopeの年代分布

1991年 – 2018年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1991年発行の『Jurassic Park(邦題:ジュラシック・パーク)』(マイクル・クライトン = 著)で、最も新しい洋書は2018年発行の『Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar(邦題:大谷翔平 二刀流の軌跡)』(ジェイ・パリス = 著)でした。

Push the envelopeの出現パターン

push the envelopeの出現パターンは主に以下の2つに分類することができます。

パターン1:push the envelope(基本型・最頻出パターン)
パターン2:push the edge of the envelope(まれ)

パターン1は「push the envelope」の形で使用する基本型で例文をあげると次のようになります。

例文194-1)
They pushed the envelope of human ability.
彼らは人間の能力の限界に挑みました。

例文194-2)
Apple pushed the envelope of mobile devices.
アップルは、モバイル機器の持つ可能性を押し広げました。

例文194-3)
He has a flexible way of thinking and doesn’t hesitate to push the envelope.
彼は柔軟な考え方の持ち主で、既成概念の枠を超えることをためらいません。

パターン2は「push the edge of the envelope」の形で使用するまれなパターンで、意味は「push the envelope」と同じです。「edge(縁、境界)」という単語を使うことで「ぎりぎり」のところに挑んでいるというニュアンスをより強調しているものと思われます。

洋書内の実例

push the envelopeのイメージ画像2です。

それでは、実際に洋書内にみられるpush the envelopeの使用例を紹介していきます。

 

まずは、「push the envelope」の形で使用する基本型のパターン1から紹介します。

パターン1:push the envelope(基本型・最頻出パターン)

実例1(パターン1):iCon: Steve Jobs (2005)(邦題『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』、ジェフリー・S・ヤング + ウィリアム・L・サイモン = 著)より

There was an arrogance about the young prince of technology on his first ascendancy at Apple that made him seem cold and empty, even as he pushed the envelope of what was possible with a personal computer. He attracted followers, but it was a cult.
アップルコンピュータ社を創り育てたころのテクノロジーの若いプリンスは、パーソナルコンピューターが持つ可能性を広げることには成功したが、同時に、尊大なところがあり、冷血で誠意がないと感じられた。信奉者もいたが、それはカルト的な集団だった。

引用元:
(英語原著)iCon: Steve Jobs – THE GREATEST SECOND ACT IN THE HISTORY OF BUSINESS (2005) by Jeffrey S. Young and William L. Simon; Prologue
(日本語版)『スティーブ・ジョブズ 偶像復活』(ジェフリー・S・ヤング + ウィリアム・L・サイモン = 著、井口耕二 = 訳)、東洋経済新報社(2005/11);プロローグより

【単語ノート】
arrogance = 傲慢さ
ascendancy [əséndənsi] = 支配、優勢

1976年に相棒のスティーブ・ウォズニアックとともに、21歳でアップルコンピュータ社を設立したスティーブ・ジョブズはわずか数年で大成功を収め、25歳の若さで数億ドルの資産を手にします。しかし、その尊大でトゲのある振る舞いから社内には敵も多く、30歳を迎えた1985年にはアップルを事実上追放されてしまいます。

その後、アップルへの復讐を胸に設立したネクストコンピュータ社で大きな挫折を味わったジョブズは1996年、41歳を迎えて幾分か丸く人間らしくなった姿で瀕死のアップルに戻ってきます。

上記英文はこうしたジョブズの人間性の変化について記載した部分から引用したもので、アップル追放前でテクノロジーの若きプリンスと称された頃にジョブズがパーソナルコンピューターの持つ可能性を押し広げたことが「push the envelope」を用いて表現されています。

実例2(パターン1):Letters to a Young Gymnast (2004)(邦題『コマネチ 若きアスリートヘの手紙』、ナディア・コマネチ = 著)より

She was smaller, younger, leaner, and focused not only on mastering technique but also on pushing the envelope on each apparatus to achieve the maximum level of difficulty and the highest possible score.
従来の選手より小柄で、幼く、細い。そしてテクニックを自分のものにするだけでなく、各種目で限界に挑んで、難度をきわめ、可能なかぎりの高得点を出そうと一生懸命だった。

引用元:
(英語原著)Letters to a Young Gymnast (2004) by Nadia Comaneci; Tough Teens
(日本語版)『コマネチ 若きアスリートヘの手紙』(ナディア・コマネチ = 著、鈴木淑美 = 訳)、青土社(2004/9);5(曲がり角)より

この英文は、1977年にヨーロッパ選手権が開催された頃に見られた体操界の変化について記載しています。それまでは、選手もコーチもあまりリスクを犯すことを好まず、それほどテクニック重視でもなかったのですが、この頃から体操選手の小型化や低年齢化が進み、テクニック重視へと変化します。

上記引用文では、こうした変化に伴って選手たちが各種目で「限界に挑む」ようになったことが「push the envelope」を用いて表現されています。

実例3(パターン1):The Facebook Effect: The Inside Story of the Company That Is Connecting the World (2010)(邦題『フェイスブック 若き天才の野望 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた』、デビッド・カークパトリック = 著)より

“Whenever we roll out any major product there’s some sort of backlash. We need to be sure we can still aggressively build products that are on the edge and manage this big user base. I’d like us to keep pushing the envelope.”
「新しく大きなサービスを導入すれば必ず何らかの反動がある。ぼくたちは、それでも最先端の製品を積極的につくり、この巨大なユーザー数をうまく運営していく必要がある。ぼくはぎりぎりまで限界に挑戦していきたい

【単語ノート】
roll out = 展開する
backlash = 反感、反発、反動

実例4(パターン1):Jony Ive: The Genius Behind Apple’s Greatest Products (2013)(邦題『ジョナサン・アイブ:偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー』、リーアンダー・ケイニー = 著)より

“Apple was producing designs much more complicated than any of our computer rivals,” said Dunn. “The surfaces on [the iMac] were more akin to the aerospace and automotive industries than the computer industry…. We were pushing the envelope.”
デューンは言う。
「アップルは競合他社よりもはるかに複雑なデザインを行っていた。iMACの表面は、コンピュータ業界よりも宇宙業界や自動車業界にはるかに近かった。限界に挑んでいたんだ

(中略)

Andresen said Apple’s innovative designs of the late 1990s and early 2000s pushed the envelope of what CAD tools could handle at the time.
1990年代の後半から2000年代前半にかけてのアップルの斬新なデザインは、当時のCADツールの限界に挑むものだったとアンドリーセンは言う。

引用元:
(英語原著)Jony Ive: The Genius Behind Apple’s Greatest Products (2013) by Leander Kahney; CHAPTER 5 Jobs Returns to Apple
(日本語版)『ジョナサン・アイブ:偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー』(リーアンダー・ケイニー = 著、関 美和 = 訳)、日経BP社(2015/1);5(帰ってきたジョブズ)より

実例5(パターン1):LIVING HISTORY (2003)(邦題『リビング・ヒストリー:ヒラリー・ロダム・クリントン自伝(上・下)』、ヒラリー・ロダム・クリントン = 著)より

“What do you want to accomplish?” Madeleine had asked me earlier.
「あなたが成し遂げたいと思ってることは何かしら?」。以前、マデリンにこう聞かれたことがあった。

I want to push the envelope as far as I can on behalf of women and girls,” I said.
女性と少女のために、既成概念の枠を超えてできる限りのことをしたいと思ってるわ」とわたしはいった。

引用元:
(英語原著)LIVING HISTORY (2003) by Hillary Rodham Clinton; WOMEN’S RIGHTS ARE HUMAN RIGHTS
(日本語版)『リビング・ヒストリー:ヒラリー・ロダム・クリントン自伝(上・下)』(ヒラリー・ロダム・クリントン = 著、酒井洋子 = 訳)、早川書房(2007/11);下巻・「女性の権利は人権だ」より

実例6(パターン1):NIGEL MANSELL: My Autobiography (1995)(邦題『全開 マンセル自伝』、ナイジェル・マンセル + ジェイムス・アレン = 著)より

I didn’t want to push the envelope any more than that, there was no need to over-extend myself, so I basically ‘put myself to sleep’.
それ以上攻める気もなかったし、私自身の限界を大きく越える必要もなく、まあ〝居眠りしても走れる〟程度に抑えていたといえる。

引用元:
(英語原著)NIGEL MANSELL: My Autobiography (1995) by Nigel Mansell OBE with James Allen; 16 HONDA
(日本語版)『全開 マンセル自伝』(ナイジェル・マンセル + ジェイムス・アレン = 著、熊倉重春 = 訳)、二玄社(1996/10);第16章(ホンダ)より

実例7(パターン1):The Yankee Years (2009)(邦題『さらばヤンキース:我が監督時代』、ジョー・トーリ / トム・ベルデュッチ 共著)より

At spring training in 2003, however, Wells finally pushed the envelope of his rebellion too far, at least with the front office. He pushed it far enough that not even his golden arm could save him from the wrath of George Steinbrenner.
しかし2003年春季キャンプの際、ウェルズの反抗的な態度がとうとう許容範囲を超えてしまった。少なくともフロントはそのように解釈した。あまりにもやりすぎ、ついには黄金の腕をもってしてもジョージ・スタインブレナーの怒りを防ぐことはできなくなってしまった。

引用元:
(英語原著)The Yankee Years (2009) by Joe Torre and Tom Verducci; 7. The Ghosts Make a Final Appearance
(日本語版)『さらばヤンキース:我が監督時代』(ジョー・トーリ / トム・ベルデュッチ = 著、小坂恵理 = 訳)、青志社(2009/4);第7章(松井・ポサダが演出した史上最高の試合)より

【単語ノート】
rebellion [ribéljən] = 反乱、反抗
wrath [rǽθ] = 激怒

「Wells」とは米メジャーリーグで通算239勝を挙げたアメリカ出身の元プロ野球投手、デビッド・ウェルズを指していて、「George Steinbrenner」とはアメリカの実業家で、ニューヨーク・ヤンキースのオーナーを30年以上務めたジョージ・スタインブレナーを指しています。

ウェルズ投手は2003年、『Perfect I’m Not』なる本を出版して物議を醸します。この本は、メジャーリーガーの多くがステロイドを使用していて、ヤンキースのクラブハウスにも至るところにアンフェタミンが転がっていたことや、チームメートの批判などを記載したいわゆる暴露本でした。

この暴露本は当然のことながら当時のヤンキースのオーナーであったスタインブレナーの逆鱗に触れることとなり、上記引用文ではこうしたウェルズ投手の反抗的な態度が「許容範囲を超えてしまった」ことが「pushed the envelope of his rebellion too far」と表現されています。

 

次は、「push the edge of the envelope」の形で使用するまれなパターン2です。

パターン2:push the edge of the envelope(まれ)

実例8(パターン2):TOM CRUISE: AN UNAUTHORIZED BIOGRAPHY (2008)(邦題『トム・クルーズ 非公認伝記』、アンドリュー・モートン = 著)より

Tom was the acknowledged tough guy, a thrill seeker who pushed the edge of the envelope when his friends cried chicken.
トムはスリルを味わいたがるタフガイとして知られ、友達が怖じ気づくような場面でも、あえて危険な領域に挑戦したがった

引用元:
(英語原著)TOM CRUISE: AN UNAUTHORIZED BIOGRAPHY (2008) by Andrew Morton; CHAPTER 1
(日本語版)『トム・クルーズ 非公認伝記』(アンドリュー・モートン = 著、小浜 杳 = 訳)、青志社(2008/2);1(少年期)より

Push the envelopeのまとめ

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

push the envelope

push the envelopeのイメージ画像1です。

  • 由来:航空機が安全に飛行することのできる速度や高度、荷重の「限界範囲(フライト・エンベロープ)」のギリギリで飛行したり、限界範囲を超えて飛行する様子から。
  • 意味:限界に挑む、限界を押し広げる、既成概念を打ち破る
  • 英語による定義:extend or go beyond the normal limits
  • 出現頻度:AAA[超高頻度:極めて高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
  • 出現パターン
    パターン1:push the envelope(基本型・最頻出パターン)
    パターン2:push the edge of the envelope(まれ)
  • 例文
    They pushed the envelope of human ability.
    彼らは人間の能力の限界に挑みました。
    Apple pushed the envelope of mobile devices.
    アップルは、モバイル機器の持つ可能性を押し広げました。
    He has a flexible way of thinking and doesn’t hesitate to push the envelope.
    彼は柔軟な考え方の持ち主で、既成概念の枠を超えることをためらいません。

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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