洋書に出てくる英語表現0163:mad as a hatter【おすすめ英語フレーズ編143】

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「洋書に出てくる英語表現」の第163回は、英語学習や英会話に役立つ【おすすめ英語フレーズ編】の第143回として「mad as a hatter」を取りあげます。

Mad as a hatterの意味と由来

直訳すると、「帽子屋と同じくらい気が狂っている」となります。

この表現の由来についてはいくつか説があるのですが、一番興味深いのは、昔、実際に気が狂ったかのような帽子屋がちらほらいたことに由来するというものです。というのも、この表現が盛んに使われ始めた頃(恐らく1800年頃)は、帽子のフェルト生地を硬くするために硝酸第二水銀が使用されていて、その溶液から出てくる水銀蒸気を長期にわたって吸い込んだ帽子職人に身体のしびれや震え、舞踏病(自分の意思とは無関係に生じる踊っているかのような不随意運動)、精神不安定といった水銀中毒のような症状がよく現れていました。

ただ、昔、気が狂った帽子屋が多かったのは、水銀中毒ではなく、革を柔らかくする「なめし」加工の工程で使用するクロムが原因であったとの説もあります。

何が原因であったにせよ、気が狂ったかのような帽子屋がちらほらといたことは事実のようで、直訳すると「帽子屋と同じくらい気が狂っている」となる「mad as a hatter」は、「完全に気が狂っている」を意味するフレーズとして使用されるようになりました。

日本語では「完全に気が狂っている」のほか、「頭がすっかりいかれている」、「完全に気がふれている」、「頭が変になっている」、「正真正銘の気違い(狂人)である」などと訳されます。

なお、「気が狂った帽子屋」と言えば、本ページの画像で使用している『不思議の国のアリス(Alice’s Adventures in Wonderland)』に出てくる帽子屋のマッド・ハッター(Mad Hatter)を思い出す方もおられると思いますが、『不思議の国のアリス』が出版された1865年には既にこの表現が使用されていましたので、「マッド・ハッター(Mad Hatter)」というキャラクターから「mad as a hatter」という表現が生まれたのではなく、作者のルイス・キャロルは「mad as a hatter」という表現にヒントを得て、「マッド・ハッター(Mad Hatter)」というキャラクターを生み出したものと考えられます。

Mad as a hatterの英語による定義

completely crazy

洋書におけるmad as a hatterの出現頻度

B[低頻度:洋書内での出現頻度はそれほど高くはないがネイティブなら知っている英語表現]

(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)

Mad as a hatterの年代分布

1919年 – 1991年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1919年発行の『The Moon and Sixpence(邦題:月と六ペンス)』(サマセット・モーム = 著)で、最も新しい洋書は1991年発行の『Jurassic Park(邦題:ジュラシック・パーク)』(マイクル・クライトン = 著)でした。

このように当ブログの調査では、1991年が最も新しい使用例でした。後述の「洋書内の実例」の項を見てもらえれば分かるように、1900年代前半の使用例が多く、特にアガサ・クリスティーが好んで使用した表現のようです。

こうしたことから、今でも使用される表現ではあるものの、使用頻度としては近年低下傾向にあるのではないかと推測されます。

Mad as a hatterの出現パターン

出現パターン:… is (as) mad as a hatter

基本的に「… is (as) mad as a hatter」のパターンで使用され、それ以外に出現パターンと言えるような特別な型は見当たりません。

例文163-1)
I hear that John donated all his property to a suspicious religious group. He is as mad as a hatter.
ジョンは、あやしい宗教団体に全財産を寄付したらしいよ。完全に気が狂ってるよ。

洋書内の実例

mad as a hatterのイメージ画像2です。

それでは、実際に洋書内にみられるmad as a hatterの使用例を紹介していきます。

 

実例1:And Then There Were None (1939)(邦題『そして誰もいなくなった』、アガサ・クリスティー = 著)より

If you ask me that woman’s as mad as a hatter! Lots of elderly spinsters go that way — I don’t mean go in for homicide on the grand scale, but go queer in their heads.
あの婆さんはたしかに頭が変になっているぜ。年齢をとった独身女には、よくあることなんだ。殺人もしかねないんだ。

引用元:
(英語原著)And Then There Were None (1939) by Agatha Christie; Chapter Eleven
(日本語版)『そして誰もいなくなった』(アガサ・クリスティー = 著、清水俊二 = 訳)、早川書房(2003/10);第十一章より
(英語原著Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

【単語ノート】
if you ask me = 私に言わせれば
spinster = (婚期を過ぎた)未婚女性
homicide = 殺人
queer = 風変わりな、怪しい、気が狂った

ちなみに、「殺人」を意味する「homicide」と「murder」の違いですが、「murder」は殺意のある意図的な殺人を指すのに対し、「homicide」は殺人全般をさす単語で、殺意を持って殺した場合だけでなく、殺意はなかったものの結果的に人を殺してしまったような場合も含まれます。

それでは、実際にどういう時に「murder」ではなく「homicide」を使うのかと言うと、代表的なのは警察の「殺人課(Homicide Bureau)」ではないでしょうか。何らかの殺人事件が生じた時点で、それが殺意のある「murder」だったかどうかは分からないことも多いでしょうし、少なくとも最初の時点では殺意の有無によって警察の別の部署が動くわけではないでしょうから、「homicide」と呼ぶ方が適切であると思われます。

実例2:The Mysterious Affair at Styles (1920)(邦題『スタイルズ荘の怪事件』、アガサ・クリスティ = 著)より

“Is he quite mad, Mr. Hastings?”
「ほんとうにお頭(つむ)が変じゃありませんの、ヘイスティングズさん?」

“I honestly don’t know. Sometimes, I feel sure he is as mad as a hatter; and then, just as he is at his maddest, I find there is method in his madness.”
「正直なところ、わたしにもわかりませんね。時々、確かに、彼は大変な気違いだという気のする時があるんです。ところが、その気違いぶりが絶頂に達した時、その気違いぶりに筋道が立っているような気がするんです」

引用元:
(英語原著)The Mysterious Affair at Styles (1920) by Agatha Christie; CHAPTER X. THE ARREST
(日本語版)『スタイルズ荘の怪事件』(アガサ・クリスティ = 著、能島武文 = 訳)、グーテンベルク21(2003/6);第十章(逮捕)より。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/12/18確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
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この英文では、「method」が「方法」ではなく、「秩序」や「筋道」という意味で使用されていることにも注目してください。

「method」が「秩序」や「筋道」という意味で使用されることは比較的珍しいのですが、反対に形容詞の「methodical」や副詞の「methodically」になると「方法」という意味は消えて、もっぱら「整然とした」や「秩序だった」、「几帳面な」という意味で使用されることも覚えておくとよいと思います。

実例3:Parker Pyne Investigates (1934)(邦題『幸福手配師 パーカー・パイン(1・2)』、アガサ・クリスティ = 著)より

You must have heard of her. Lady Esther Carr. Mad as a hatter.
その婦人のことは、きっとお耳にされたことでしょう。レディ・エスター・カー。正真正銘の気違いですよ

(中略)

Lady Esther Carr might be mad as a hatter, but she was still Lady Esther Carr.
レディ・エスター・カーは、ほんとうの狂人だったかもしれないが、それでもレディ・エスター・カーに変わりはない。

引用元:
(英語原著)Parker Pyne Investigates (1934) by Agatha Christie; The House at Shiraz
(日本語版)『幸福手配師 パーカー・パイン(1・2)』(アガサ・クリスティ = 著、小西宏 = 訳)、グーテンベルク21(2005/1);(2)(シラズの館)より。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/12/18確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
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実例4:THE MOUSETRAP (1954)(邦題『ねずみとり』、アガサ・クリスティー = 著)より

MAJOR METCALF. Everything’s under control. He will be unconscious soon with a sedative — his sister’s looking after him. Poor fellow’s as mad as a hatter, of course. I’ve had my suspicions of him all along.
少佐 万事おさまりました。鎮静剤がきいてすぐ眠ってしまうでしょう — いまねえさんがみてやってます。かわいそうに、やっこさん、頭がすっかりいかれてしまってる。はじめからくさいくさいと思ってはいたんだが。

引用元:
(英語原著)THE MOUSETRAP (1954) by Agatha Christie; ACT TWO
(日本語版)『ねずみとり』(アガサ・クリスティー = 著、鳴海四郎 = 訳)、早川書房(2004/3);第二幕より

【単語ノート】
sedative [sédətiv] = 鎮静剤

実例5:Partners in Crime (1929)(邦題『おしどり探偵(1・2)』、アガサ・クリスティ = 著)より

Mad as a hatter,” murmured Tommy.
手のつけようのない気ちがいだ」とトミーは呟いた。

“She’s been going on like that all the time,” whispered Tuppence.
「ずっとあんなふうなのよ」とタペンスは囁いた。

引用元:
(英語原著)Partners in Crime (1929) by Agatha Christie; THE HOUSE OF LURKING DEATH
(日本語版)『おしどり探偵(1・2)』(アガサ・クリスティ = 著、橋本福夫 = 訳)、グーテンベルク21(2010/8);(2)死のひそむ家より
(英語原著Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

実例6:The Moon and Sixpence (1919)(邦題『月と六ペンス』、サマセット・モーム = 著)より

He must be as mad as a hatter,” exclaimed the Colonel.
やつ、すっかり気でも狂ったにちがいないぜ」と、大佐が叫んだ。

引用元:
(英語原著)The Moon and Sixpence (1919) by William Somerset Maugham; Chapter XV
(日本語版)『月と六ペンス』(サマセット・モーム = 著、龍口 直太郎 = 訳)、グーテンベルク21(2009/5);十五より。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/12/18確認)。(Kindle Unlimited 無料体験

【単語ノート】
exclaim = 叫ぶ、大声を出す

実例7:The Stand (complete & uncut ed.) (1990)(邦題『ザ・スタンド(1・2・3・4・5)』、スティーヴン・キング = 著)より

He had been in God’s frying pan for a week now, moving southwest across Utah, the tip of Arizona, and then into Nevada, and he was just as mad as a hatter.
これでもう一週間余り、こうして神のフライパンで炒られながら、ユタ州を南西へと横切り、アリゾナの一角をかすめ、ついにはネヴァダ州に到達した彼は、いまや完全に気がふれていた

引用元:
(英語原著)The Stand (complete & uncut ed.) (1990) by Stephen King; CHAPTER 48
(日本語版)『ザ・スタンド3』(スティーヴン・キング = 著、深町眞理子 = 訳)、文藝春秋(2004/4);第四十八章より
(英語原著Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間4分57秒

実例8:Needful things (1991)(邦題『ニードフル・シングス(上・下)』、スティーヴン・キング = 著)より

Rose looked at him for a long moment, eyes blazing like gas-jets, and Alan thought: Uh-oh. This guy’s just as mad as a hatter.
かなり長いあいだ、ローズはアランをにらみつけていた。その眼はガス灯のようにぎらぎらと輝いている。アランは思った — うひゃあ、やっこさん、めちゃくちゃ頭にきてる

引用元:
(英語原著)Needful things (1991) by Stephen King; CHAPTER FOUR
(日本語版)『ニードフル・シングス(上・下)』(スティーヴン・キング = 著、芝山幹郎 = 訳)、文藝春秋(1994/6;文庫版1998/7);上巻・第四章より
(英語Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

【単語ノート】
blaze = 燃えさかる;怒りに燃える
gas-jet = ガス灯、ガスバーナー

この英文のように、mad as a hatterはcrazyというよりもangryの意味で使用されることも低頻度ながらあります。mad自体にangryの意味があるのでこのような使われ方をするのだと思いますが、「気の狂った帽子屋」というこの表現の由来を考えると、あまり適切ではないような気もします。

実例9:Jurassic Park (1991)(邦題『ジュラシック・パーク(上・下)』、マイクル・クライトン = 著)より

“Dr. Malcolm,” Hammond explained, “is a man of strong opinions.”
And mad as a hatter,” Malcolm said cheerfully.
「マルカム博士は —」ハモンドが口をはさんだ。「強固な信念の持ち主でね」
しかも、アリスの帽子屋のようにいかれてる」マルカムがうれしそうにいった。

引用元:
(英語原著)Jurassic Park (1991) by Michael Crichton; SECOND ITERATION, Malcolm
(日本語版)『ジュラシック・パーク(上・下)』(マイクル・クライトン = 著、酒井昭伸 = 訳)、早川書房(1993/3);上巻・第二反復、マルカム

Mad as a hatterのまとめ

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

mad as a hatter

mad as a hatterのイメージ画像1です。

  • 由来:かつて帽子の製造工程で使用する化学物質(フェルト生地を硬くするための硝酸第二水銀又は革のなめし加工で使用するクロム)を長期にわたって吸い込んだために中毒症状が現れたと思われる「気の狂った帽子屋(mad hatter)」がちらほらと存在していたことから。
  • 意味:完全に気が狂っている、頭がすっかりいかれている、気違いである
  • 英語による定義:completely crazy
  • 出現頻度:B[低頻度:洋書内での出現頻度はそれほど高くはないがネイティブなら知っている英語表現]
  • 出現パターン:… is (as) mad as a hatter
  • 例文
    I hear that John donated all his property to a suspicious religious group. He is as mad as a hatter.
    ジョンは、あやしい宗教団体に全財産を寄付したらしいよ。完全に気が狂ってるよ。

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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