洋書に出てくる英語表現0142:grasp the nettle【おすすめ英語フレーズ編122】

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「洋書に出てくる英語表現」の第142回は、フレーズ編の第122回として主にイギリスで使用される「grasp the nettle」という表現を取りあげます。

Grasp the nettleの意味と由来

直訳すると、「イラクサをつかむ」となります。

この表現は、アイルランドの劇作家Sean O’Caseyによる「Juno and the Paycock(ジュノーと孔雀)」(1924)に出てくる次の文章に由来すると言われています。

‘If you gently touch a nettle it’ll sting you for your pains; grasp it like a lad of mettle, an’ as soft as silk remains’.
イラクサにやさしく触ると、トゲが刺さって痛い。勇敢な若者のようにしっかりとつかみなさい。そうすれば、絹のように柔らかいから。

ただ、この文章もまったくのオリジナルというわけではなく、少なくともその発想の大元は紀元前6世紀に書かれたと言われるイソップ寓話の『the Boy and the Nettles(少年とイラクサ)』にあるのではないかと考えられます。

THE BOY AND THE NETTLE
A BOY playing in the fields got stung by a Nettle. He ran home to his mother, telling her that he had but touched that nasty weed, and it had stung him. “It was just your touching it, my boy,” said the mother, “that caused it to sting you; the next time you meddle with a Nettle, grasp it tightly, and it will do you no hurt.”
Do boldly what you do at all.
{Dodsley, Original Fables, No. 19.}
少年とイラクサ
野原で遊んでいた少年がイラクサに刺されました。少年は家に飛んで帰ってお母さんに言いました。
「あの意地悪な草はね、ほんの少し触っただけなのに僕を刺したんだよ」
すると、お母さんは言いました。
「それはねぇ。少し触っただけだから刺されたんだよ。次にイラクサに手を出すときには、しっかりとつかんでおやり。そうすればケガなんかしないわよ」
なんであれ、やるときは大胆にすべし。

引用元:
(英語版)An argosy of fables (1921) selected and edited by FREDERIC TABER COOPER; Book 3, PART 1, ENGLISH FABLES
(日本語)当サイト訳

このイソップ寓話にあるように、イラクサにさわる時は、中途半端に少しだけ触れるよりも覚悟を決めてしっかりと掴む方が痛くないことから、「grasp the nettle」は「覚悟を決めて困難に立ち向かう」ことを意味するフレーズとして使用されるようになりました。

日本語では、「覚悟を決めて困難に立ち向かう」のほか、「進んで困難と戦う」、「火中の栗を拾う」、「困難に決然と立ち向かう」、「果敢に取り組む」などと訳されます。

ちなみに、イラクサとは次の写真のような植物で、葉や茎の表面には白っぽい毛のようなトゲが生えています。トゲには毒が含まれていて、触るとその毒により強い痛みが生じるということです。

Grasp the nettleの英語による定義

deal with a difficult problem with determination

洋書におけるgrasp the nettleの出現頻度

B[低頻度:洋書内での出現頻度はそれほど高くはないがネイティブなら知っている英語表現]

(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)

Grasp the nettleの年代分布

1927年 – 2013年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1927年発行の『The Case Book Of Sherlock Holmes(邦題:シャーロック・ホームズの事件簿)』(アーサー・コナン・ドイル = 著)で、最も新しい洋書は2013年発行の『ALEX FERGUSON: My Autobiography(邦題:アレックス・ファーガソン自伝)』(アレックス・ファーガソン = 著)でした。

Grasp the nettleの出現パターン

grasp the nettleの出現パターンは主に以下の2つに分類することができます。

パターン1:grasp the nettle(基本型・最頻出パターン)
パターン2:the nettleを主語にして受動態で使用するもの

パターン1は「grasp the nettle」の形で使用する基本型で、例文を挙げると次のようになります。

例文142-1)
A great leader must be a person who can grasp the nettle.
偉大なリーダーというのは、困難に決然と立ち向かうことのできる人物でなければなりません。

パターン2はthe nettleを主語にして受動態で使用するもので、例文を挙げると次のようになります。

例文142-2)
Everybody is turning a blind eye to the problem, but the nettle has to be grasped sooner or later.
皆、その問題に対して見て見ぬふりをしていますが、遅かれ早かれ覚悟を決めて取り組まなければなりません。

* turn a blind eye = 見て見ぬふりをする

洋書内の実例

grasp the nettleのイメージ画像2です。

それでは、実際に洋書内にみられるgrasp the nettleの使用例を紹介していきます。

 

まずは、「grasp the nettle」の形で使用する基本型のパターン1から紹介します。

パターン1:grasp the nettle(基本型・最頻出パターン)

実例1(パターン1):The Case Book Of Sherlock Holmes (1927)(邦題『シャーロック・ホームズの事件簿』、アーサー・コナン・ドイル = 著)より

Holmes glanced at it with raised eyebrows and an amused smile.
“The man himself. I had hardly expected this. Grasp the nettle, Watson! A man of nerve.
ホームズはそれをちらっと見ると、眉をあげて楽しそうな笑みを浮かべた。
「本人のお出ましとは。これは思いがけない展開だ。我々も覚悟を決めて取り組もうじゃないか、ワトソン君!なかなか大胆な男だ。

引用元:
(英語原著)The Case Book Of Sherlock Holmes (1927) by Arthur Conan Doyle; 1 The Adventure of the Mazarin Stone
(日本語版)『シャーロック・ホームズの事件簿』(アーサー・コナン・ドイル = 著);マザリンの宝石、(当サイト訳)

実例2(パターン1):Barca: The Making of the Greatest Team in the World (2012)(邦題『FCバルセロナの語られざる内幕 サッカー史上最強クラブはこうして誕生した』、グレアム・ハンター = 著)より

So, he grasped the nettle in a press conference, in April 2001, where he announced that he had taken a unilateral decision to leave Barcelona and to embark on a foreign adventure.
そこで、2001年4月に単独で記者会見を開き、バルセロナを去って海外へ冒険に出る決意を固めたことを一方的に発表した。

引用元:
(英語原著)Barca: The Making of the Greatest Team in the World (2012) by Graham Hunter; 6 – THE MAKING OF PEP
(日本語版)『FCバルセロナの語られざる内幕 サッカー史上最強クラブはこうして誕生した』(グレアム・ハンター = 著、松宮寿美 = 訳)、SBクリエイティブ(2012/11);第6章(ペップのできるまで)より
(英語原著Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間約5分

【単語ノート】
press conference = 記者会見
unilateral decision = 一方的な決定
embark on = …にとりかかる、着手する

スペインサッカーの名門FCバルセロナの地元カタルーニャに生まれ、13歳の時にバルセロナの下部組織ラ・マシアに加入して以来、バルセロナとともに歩んできたペップ・グアルディオラは、契約問題のこじれなどから2001年、17年間過ごしてきたバルセロナを離れることを決意します。上記引用文は、その時の状況を記載したもので、グアルディオラが覚悟を決めて決然とした態度で記者会見に臨んだことが「grasp the nettle」を用いて表現されています。

なお、グアルディオラはその後、イタリア・セリエAのブレシアやASローマでプレーし、当時のASローマの監督であったファビオ・カペッロから将来の指導者人生の基礎を学んだということです。

実例3(パターン1):ALEX FERGUSON: My Autobiography (2013)(邦題『アレックス・ファーガソン自伝』、アレックス・ファーガソン = 著より)

Look at the way Ronaldo or Giggs looked after themselves. Wayne needed to grasp the nettle.
ロナウドやギグスが自己管理を徹底したように、ルーニーも自分と戦わなければいけなかった

引用元:
(英語原著)ALEX FERGUSON: My Autobiography (2013) by Alex Ferguson; 24. Rooney
(日本語版)『アレックス・ファーガソン自伝』(アレックス・ファーガソン =著、小林玲子 = 訳)、日本文芸社(2014/5);第24章(ウェイン・ルーニー)より
(英語原著Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

この英文は、英プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドの監督を27年間務めた名将アレックス・ファーガソンが2011年ごろのウェイン・ルーニーについて記載したものです。ファーガソン監督によると、ルーニーは素晴らしい才能の持ち主で息を呑むような素晴らしいプレーを見せる一方で、自己管理がやや甘く、少し試合間隔が空いたりするとすぐにコンディションが落ちて、本来の動きを取り戻すのに4、5試合かかっていたと言います。

上記引用文では、こうした点からルーニーはもっと覚悟を決めてサッカーと向き合わなければならないというファーガソン監督の見解が「grasp the nettle」を用いて表現されていて、ここでは「自分と戦わなければいけなかった」と訳されています。

実例4(パターン1):The Difference Engine (1990)(邦題『ディファレンス・エンジン』、ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング = 著)より

Somehow we must grasp the nettle. The alternative would be to lie still and let the devil have his way with the world to come. And I for one should rather burst to pieces, than see Science prostituted!”
何とあっても、我々は進んで困難と戦わなくてはならない。そうしないならば、ただ座して、これからの世界を悪魔の思うがままにさせるばかりだ。そして、私としては、科学が身をひさぐのを見るぐらいなら、体を八つ裂きにされた方がましだ」

引用元:
(英語原著)The Difference Engine (1990) by William Gibson & Bruce Sterling; THIRD ITERATION Dark-Lanterns
(日本語版)『ディファレンス・エンジン』(ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング = 著、黒丸尚 = 訳)、角川書店(1991/6);上巻・第三の反復(裏取引屋)より
(英語Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

【単語ノート】
lie still = じっとする
I for one = 私としては、私個人としては
prostitute = (お金のために)…を売る;売春婦

 

次は、the nettleを主語にして受動態で使用するパターン2です。

パターン2:the nettleを主語にして受動態で使用するもの

実例5(パターン2):Downing Street Years (1993)(邦題『サッチャー回顧録 – ダウニング街の日々』、マーガレット・サッチャー = 著)より

However, I decided on Monday 26 March that this nettle must now be grasped.
しかし、三月二十六日月曜日、私は火中の栗を拾う決心をした。

引用元:
(英語原著)Downing Street Years (1993) by Margaret Thatcher; CHAPTER XIII Mr Scargill’s Insurrection
(日本語版)『サッチャー回顧録 – ダウニング街の日々』(マーガレット・サッチャー = 著、石塚 雅彦 = 訳)、日経(1993/11);上巻・第13章(スカーギル氏の反乱)より

実例6(パターン2):THE PATH TO POWER (1995)(邦題『サッチャー 私の半生』、マーガレット・サッチャー = 著)より

Within the Shadow Cabinet the great majority of my colleagues would not have gone along with me. But some time soon the nettle would have to be grasped.
影の内閣の内部でも、大多数のメンバーは私についてこようとしなかっただろう。しかし、遠からず、困難に決然と立ち向かわなくてはならなかった

引用元:
(英語原著)THE PATH TO POWER (1995) by Margaret Thatcher; PART ONE: CHAPTER XI Apprenticeship for Power
(日本語版)『サッチャー 私の半生〈上・下〉』(マーガレット・サッチャー = 著、石塚 雅彦 = 訳)、日本経済新聞社 (1995/8);下巻・第11章(政権への修行時代)より

【単語ノート】
some time soon = 近いうちに

Grasp the nettleのまとめ

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

grasp the nettle

grasp the nettleのイメージ画像1です。

  • 由来:イラクサにさわる時は、中途半端に少しだけ触れるよりも覚悟を決めてしっかりと掴む方が痛くないことから。
  • 意味:覚悟を決めて困難に立ち向かう、進んで困難と戦う、火中の栗を拾う、困難に決然と立ち向かう、果敢に取り組む
  • 英語による定義:deal with a difficult problem with determination
  • 出現頻度:B[低頻度:洋書内での出現頻度はそれほど高くはないがネイティブなら知っている英語表現]
  • 出現パターン
    パターン1:grasp the nettle(基本型・最頻出パターン)
    パターン2:the nettleを主語にして受動態で使用するもの
  • 例文
    A great leader must be a person who can grasp the nettle.
    偉大なリーダーというのは、困難に決然と立ち向かうことのできる人物でなければなりません。 Everybody is turning a blind eye to the problem, but the nettle has to be grasped sooner or later.
    皆、その問題に対して見て見ぬふりをしていますが、遅かれ早かれ覚悟を決めて取り組まなければなりません。

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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