洋書に出てくる英語表現0077:wash one’s hands of【おすすめ英語フレーズ編60】

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「洋書に出てくる英語表現」の第77回は、フレーズ編の第60回として「wash one’s hands of」を取りあげます。

Wash one’s hands ofの意味と由来

直訳すると、「…から手を洗う」となります。

この表現は、新約聖書「マタイによる福音書」内の一節(27:24)に由来します。

So when Pilate saw that nothing was being gained, but rather that a disturbance was starting, he took water, and washed his hands before the multitude, saying, “I am innocent of the blood of this righteous person. You see to it.”
ピラトは手のつけようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、水を取り、群衆の前で手を洗って言った、「この人の血について、わたしには責任がない。おまえたちが自分で始末をするがよい」。

日本語訳:『口語 新約聖書』(日本聖書協会発行)初版(1954年版)
英語訳:The World English Bible (WEB)

この引用文にあるように、ローマ帝国のユダヤ総督ポンテオ・ピラト(Pontius Pilate)は、イエスの死刑判決に際し、群衆の目の前で手を洗ってイエスの死は自分の責任ではないと宣言するとともに、「おまえたちが自分で始末をするがよい」と言って、この件から手を引きました。

このようにピラト総督が手を洗ってイエスの死刑判決の件から手を引いた様子から、「wash one’s hands of …」は「…から手を引く」や「…と手を切る」を意味するフレーズとして広く使用されるようになりました。

日本語では、「…から手を引く」や「…と手を切る」のほか、「…から足を洗う」、「…との関係を絶つ」、「匙を投げる」などと訳されます。

基本となる意味は「…との関係を絶つ」で、関係を絶つ対象が商売や悪事などの物事の場合は、「…から手を引く」や「…から足を洗う」という日本語になり、関係を絶つ対象が「人」の場合は「…と手を切る」という日本語になります。

ちなみに、日本語の「足を洗う」という表現は、僧侶が修行を終えて寺に帰ってきた時に足を洗って俗世の煩悩を洗い清めたことに由来します。日本語の「足を洗う」が仏教に由来し、それに対応する英語表現(wash one’s hands of …)がキリスト教(聖書)に由来するというのも面白いですね。

Wash one’s hands ofの英語による定義

stop being involved with someone or something

洋書におけるwash one’s hands ofの出現頻度

AAA[超高頻度:極めて高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]

(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)

Wash one’s hands ofの年代分布

1868年 – 2018年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1868年発行の『Little Women(邦題:若草物語)』(オールコット = 作)で、最も新しい洋書は2018年発行の『FIRE AND FURY(邦題:炎と怒り——トランプ政権の内幕)』でした。

Wash one’s hands ofの出現パターン

wash one’s hands ofの用法に特に出現パターンと言えるような特別な型は見当たりません。

例文を挙げると次のようになります。

例文77-1)
I washed my hands of him. I’m fed up with being taken advantage of all the time.
彼とは手を切りました。いつも利用されてばかりなのにはもうウンザリなんです。

例文77-2)
I think we are getting out of our depth. Maybe we should wash our hands of the whole thing.
だんだん私たちの手に余る状況になってきたので、この件からは完全に手を引いた方が良いように思います。

out of one’s depthについては以下の記事で詳しく解説しています。

洋書内の実例

wash one's hands ofのイメージ画像2です。

それでは、実際に洋書内にみられるwash one’s hands ofの使用例を紹介していきます。

実例1:THE ACCIDENTAL BILLIONAIRE (2010)(邦題『フェイスブック 世界最大のSNSでビル・ゲイツに追る男』、ベン・メズリック = 著)より

The administration was washing its hands of the whole thing. Thefacebook was a popular campus phenomenon. Mark was getting famous, his Web site was growing daily — and the president was basically endorsing his success. Maybe Summers sincerely didn’t think the Winklevoss twins had a case against the kid.
大学当局は完全にこの件から手を引こうとしている。ザ・フェイスブックはキャンパスで大人気だ。マークの知名度は上がっている。彼のウェブサイトは日々拡張し、学長は彼の成功を基本的に認めている。サマーズは、ウィンクルボス兄弟にはマークを非難する理由などないと思っているのかもしれない。

引用元:
(英語原著)THE ACCIDENTAL BILLIONAIRE (2010) by Ben Mezrich; CHAPTER 16 VERITAS
(日本語版)『フェイスブック 世界最大のSNSでビル・ゲイツに追る男』(ベン・メズリック = 著、夏目 大 = 訳)、青志社(2010/4);第一六章(学長への直訴)より引用
(英語Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間7分24秒

【単語ノート】
endorse = 承認する、支持する
sincerely = 心から

Facebookの共同創業者であるマーク・ザッカーバーグは、ハーバード大学在学中の2004年にハーバード大学の寮でThefacebookを立ち上げます(当時はフェイスブックの前に「ザ」が付いて「ザ・フェイスブック」と呼ばれていました)。当初はハーバード大学の学生同士が交流するためのサービスだったのですが、利用者は瞬く間に増えてハーバード大学から他の大学にも広まり、最終的には全世界に広がります。

このFacebookの大成功を苦々しい思いで見ていたのが、この引用文に出てくるウィンクルボス兄弟でした。同じくハーバード大学の学生であったウィンクルボス兄弟は、フェイスブックの立ち上げ前から、フェイスブックに似たSNSサイト「ハーバード・コネクション」を計画していて、プログラマーとしてマーク・ザッカーバーグにサイトの作成を依頼していたからです。

自分たちのアイデアを横取りされたと感じたウィンクルボス兄弟はハーバード大学の学長であるサマーズに助けを求めますが、サマーズ学長はこの件に関わる気が全くなく、当事者同士で解決するよう告げます。

この引用文では、こうした大学側の対応が「wash one’s hands of」を用いて表現されていて、ここでは「完全にこの件から手を引こうとしている」と訳されています。

同じ本の第23章にも「wash one’s hands of」が再度出てきます。

Harvard had washed its hands of the situation. Mark had ignored their e-mails and their cease-and-desist letter. There was really only one option left.
ハーバード大学はこの事態から手を引いてしまった。三人からのメールや使用停止を求める警告状をマークは無視した。残された選択肢は、ひとつしかない。訴訟だ。

引用元:
(英語原著)THE ACCIDENTAL BILLIONAIRE (2010) by Ben Mezrich; CHAPTER 23 HENLEY ON THE THAMES
(日本語版)『フェイスブック 世界最大のSNSでビル・ゲイツに追る男』(ベン・メズリック = 著、夏目 大 = 訳)、青志社(2010/4);第二三章(踏み潰されるライバルたち)より引用

「三人」とは、タイラーとキャメロンのウィンクルボス兄弟、そして「ハーバード・コネクション」のアイデアを最初に思いついたディヴャを指しています。完全に先を越された3人は、ザ・フェイスブックに大きく遅れてコネクトU (ConnectU)というサイトを立ち上げますが、爆発的な勢いで広がっていたザ・フェイスブックにはどうしても太刀打ちできず、最終的に訴訟に踏み切ります。そのような流れで出てくるのがこの引用文で、先ほどと同じく大学はこの件から手を引いていたという部分が「wash one’s hands of」で表現されています。

実例2:Agahta Christie: An autobiography (1977)(邦題『アガサ・クリスティー自伝』アガサ・クリスティー = 著)より

The doctor threw up his hands once again, vociferated more French, and departed, more or less washing his hands of me.
医師はもう一度両手を振り上げフランス語をどなり散らして、どうやらわたしにはさじを投げた様子で、出ていった

引用元:
(英語原著)Agahta Christie: An autobiography (1977) by Agatha Christie; PART IX LIFE WITH MAX
(日本語版)アガサ・クリスティー自伝〈上・下〉 (アガサ・クリスティー = 著、乾 信一郎 = 訳) 、早川書房(2004/10);下巻・第九部(マックスとの生活)より引用
(Audible版)Audible–完全版;サンプル再生時間4分51秒

【単語ノート】
vociferate [vəʊˈsɪfəreɪt/vəˈsɪfəreɪt] = わめく、叫ぶ

イギリスの推理作家アガサ・クリスティーが1930年に再婚したマックス・マローワンと新婚旅行に出かけた時の出来事が書かれています。この引用文は、ギリシャでひどい腹痛に襲われたアガサ・クリスティーとギリシャ人医師との間で繰り広げられた口論の様子が記載されていて、ギリシャ人医師がアガサ・クリスティーの扱いに関してさじを投げたという部分が「wash one’s hands of」で表現されています。

実例3:The Devotion of Suspect X (2011)(日本語原著『容疑者Xの献身』、東野圭吾 = 著)より

In the beginning, they were happy. Togashi had a steady income, so Yasuko could wash her hands of the nightclub scene. He was great with Misato, too, and for her part, Misato seemed to try hard to think of him as “Daddy.”
結婚当初は幸せだった。富樫の収入が安定していたから、靖子は水商売から足を洗うことができた。また彼は美里をかわいがってもくれた。美里も彼を父親として受けとめようと努力しているように見えた。

引用元:
(英語版)The Devotion of Suspect X (2011) by Keigo Higashino, translation by Alexander O. Smith; Chapter One
(日本語原著)『容疑者Xの献身』(東野圭吾 = 著)、文藝春秋(2005/8);第1章より引用
(英語Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

実例4:Never Let Me Go (2005)(邦題『わたしを離さないで』、カズオ・イシグロ = 著)より

“You speak to them,” Madame said, as though washing her hands of everything. But she remained standing behind the wheelchair, her eyes blazing towards us.
「あなたが話してください」とマダムが繰り返しました。わたしは手を引きます、と言っているようでした。そのまま車椅子の後ろに立ち、燃えるような目でわたしたちを見ていました。

引用元:
(英語原著)Never Let Me Go (2005) by Kazuo Ishiguro; Chapter Twenty-One
(日本語版)『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ = 著、土屋政雄 = 訳)、早川書房(2006/4);第二十一章より引用

【単語ノート】
blaze = 燃え盛る、怒りに燃える

実例5:The Last Mile (2016)(邦題『ラストマイル:完全記憶探偵エイモス・デッカー(上・下)』、デイヴィッド・バルダッチ = 著)より

Melvin’s other lawyers had washed their hands of him. I think they thought he was guilty.
歴代の弁護人はみんな匙を投げたわ。メルヴィンが有罪だと思ったんでしょうね。

引用元:
(英語原著)The Last Mile (2016) by David Baldacci; CHAPTER 46
(日本語版)『ラストマイル:完全記憶探偵エイモス・デッカー(上・下)』(デイヴィッド・バルダッチ = 著、関麻衣子 = 訳)、竹書房(2018/6);46より引用。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/8/12確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
(英語Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

実例6:Little Women (1868)(邦題『若草物語』、オールコット = 作)より

“Don’t try too many messes, Jo, for you can’t make anything but gingerbread and molasses candy fit to eat. I wash my hands of the dinner party, and since you have asked Laurie on your own responsibility, you may just take care of him.”
「そんなにたくさんつくらないほうが無事よ、ジョオ。あなたができるものったらしょうがパンと蜂蜜あめだけじゃないの、なんとか食べられるのは。いいこと、あたしはこのディナー・パーティにはかかわりあわないわよ。ローリーを招待したのはあなたなんだから、責任もっておもてなしすればいいわ」

引用元:
(英語原著)Little Women (1868) by Louisa May Alcott; Chapter Eleven Experiments
(日本語版)『若草物語』(オールコット = 作、恩地 三保子 = 訳)、グーテンベルク21(1999/8);第十一章(実験)より引用。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/8/12確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
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Well, I wash my hands of the whole affair! You are a willful child, and you’ve lost more than you know by this piece of folly.
そうかい、では、このことから、わたしはすっぱりと手をひくよ。おまえも意地っぱりだね。このばかな真似のせいで、おまえの思っているよりずっとたくさんのものをなくしたんだよ。

引用元:
(英語原著)Little Women (1868) by Louisa May Alcott; Chapter Twenty-three Aunt March Settles the Question
(日本語版)『若草物語』(オールコット = 作、恩地 三保子 = 訳)、グーテンベルク21(1999/8);第二十三章(マーチ伯母のお手柄)より引用

【単語ノート】
willful = 意地っぱりな、強情な
folly = 愚行、愚かさ

実例7:Zero at the Bone (1991)(邦題『凍りつく骨』、M.W.ウォーカー = 著)より

Maybe I should run this over to Sharb right now and wash my hands of the whole matter.
いますぐシャープに事情を話して、この件から手を引いたほうが賢明ではないか?

引用元:
(英語原著)Zero at the Bone (1991) by Mary Walker; Chapter 9
(日本語版)『凍りつく骨』(M.W.ウォーカー = 著、矢沢聖子 = 訳)、講談社(1993/4);9より引用

Wash one’s hands ofのまとめ

wash one's hands ofのイメージ画像3です。

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

wash one’s hands of

  • 由来:ローマ帝国のユダヤ総督ポンテオ・ピラト(Pontius Pilate)が群衆の目の前で手を洗って、イエスの死刑判決の件から手を引く意思を示した新約聖書「マタイによる福音書」内の一節から。
  • 意味:…との関係を絶つ、…から手を引く、…と手を切る、…から足を洗う
  • 英語による定義:stop being involved with someone or something
  • 出現頻度:AAA[超高頻度:極めて高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
  • 出現パターン:出現パターンと言えるような特別な型は見当たりません。
  • 例文
    I washed my hands of him. I’m fed up with being taken advantage of all the time.
    彼とは手を切りました。いつも利用されてばかりなのにはもうウンザリなんです。
    I think we are getting out of our depth. Maybe we should wash our hands of the whole thing.
    だんだん私たちの手に余る状況になってきたので、この件からは完全に手を引いた方が良いように思います。

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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