洋書に出てくる英語表現0071:pull out all the stops【おすすめ英語フレーズ編54】

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「洋書に出てくる英語表現」の第71回は、フレーズ編の第54回として「pull out all the stops」を取り挙げます。

目次
  1. Pull out all the stopsの意味と由来
  2. Pull out all the stopsの英語による定義
  3. 洋書におけるpull out all the stopsの出現頻度
  4. Pull out all the stopsの年代分布
  5. Pull out all the stopsの出現パターン
  6. 洋書内の実例
    1. 実例1(パターン1):THE STEVE JOBS WAY: iLEADERSHIP FOR A NEW GENERATION (2011)(邦題『ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ』、ジェイ・エリオット、ウィリアム・L ・サイモン = 著)より
    2. 実例2(パターン1):INSANELY SIMPLE: The Obsession That Drives Apple’s Success (2012)(邦題『Think Simple – アップルを生みだす熱狂的哲学』、ケン・シーガル = 著)より
    3. 実例3(パターン1):TRUMP : THE ART OF THE DEAL (1987)(邦題『トランプ自伝 不動産王にビジネスを学ぶ』、ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ= 著)より
    4. 実例4(パターン1):Life with My Sister Madonna (2008)(邦題『マドンナの素顔』、クリストファー・チコーネ/ウェンディ・リー = 著)より
    5. 実例5(パターン1):Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar (2018)(邦題『大谷翔平 二刀流の軌跡』、ジェイ・パリス = 著)より
    6. 実例6(パターン2):Mariah Carey Revisited: The Unauthorized Biography HER STORY (1998)(邦題『マライア・キャリーの選択』、クリス・ニクソン = 著)より
    7. 実例7(パターン2):Never Let Me Go (2005)(邦題『わたしを離さないで』、カズオ・イシグロ = 著)より
    8. 実例8(パターン1):The Curious Casebook of Inspector Hanshichi : Detective Stories of Old Edo (2007)(日本語原著『半七捕物帳 : 時代推理小説1』、岡本綺堂 = 著)より
  7. Pull out all the stopsのまとめ

Pull out all the stopsの意味と由来

直訳すると、「すべてのストップを引っぱる」となります。

ここでいう「ストップ」とは、下の図のような「パイプオルガンのストップ(音色を選択するノブ)」のことを指しています。

 

ストップの説明図

 

パイプオルガンは少ないもので数百本、多いものだと数万本ものパイプからなっていて、1本1本のパイプがそれぞれ異なる1つの音色を出します。演奏時には、すべてのパイプを使用するわけではなく、曲に合わせて使用するパイプ列を選択していて、使用しないパイプ列には「ストップ」がかけられて音が出ないようになっています。

あるパイプ列を使用するには、そのパイプ列に対応するストップを手前に引っ張ってストップを解除するのですが、すべてのストップを引っ張ればどのようになるでしょうか?すべてのストップを引っ張ればすべてのパイプを使用することになるので、そのオルガンで出すことができる最大限の音が出るようになります。

このようにパイプオルガンの音を抑制しているストップをすべて引っ張れば、一切の抑制が取り払われて、そのオルガンで出すことができる最大限の音が出るようになることから、「pull out all the stops」は「全力を尽くす」を意味するフレーズとして広く使用されるようになりました。

日本語では「全力を尽くす」のほか、「全力を傾ける」、「あらゆる手を尽くす」、「最大限の努力をする」などと訳されます。

Pull out all the stopsの英語による定義

do everything possible or make every effort to achieve something

洋書におけるpull out all the stopsの出現頻度

AA[高頻度: 高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]

(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)

Pull out all the stopsの年代分布

1939年 – 2018年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1939年発行の『Gray Lensman(邦題:グレー・レンズマン)』(E.E.スミス = 著)で、最も新しい洋書は2018年発行の『Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar(邦題:大谷翔平 二刀流の軌跡)』でした。

このように当ブログの調査では1939年が最も古い使用例でしたが、一般的には1867年にオックスフォード大学のMatthew Arnoldが『Essays in Criticism』という書籍の中で使用したのが比喩的な意味での「pull out all the stops」の最初の使用例だと言われています。

Pull out all the stopsの出現パターン

pull out all the stopsの出現パターンは主に以下の2つに分類することができます。

パターン1:pull out all the stops(基本型・最頻出パターン)
パターン2:その他

パターン1は、「pull out all the stops」をそのままの形で使用する基本型で、このパターン1が全使用例の95%超を占めます。例文を挙げると次のようになります。

例文71-1)
He was pulling out all the stops for the business.
彼は、そのビジネスに全力を傾けていました。

例文71-2)
We need to pull out all the stops to win the contract.
私たちは、その契約を勝ち取るためにあらゆる手を尽くす必要があります。

パターン2は、「let out all the stops」や「all stops out」などの形で使用する派生型で、出現頻度としては高くありません。このパターン2については、次の「洋書内の実例」の中で紹介します。

洋書内の実例

pull out all the stopsのイメージ画像2です。

 

それでは、実際に洋書内にみられるpull out all the stopsの使用例を紹介していきます。

 

まずは、基本型のパターン1から紹介します。

パターン1:pull out all the stops(基本型・最頻出パターン)

実例1(パターン1):THE STEVE JOBS WAY: iLEADERSHIP FOR A NEW GENERATION (2011)(邦題『ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ』、ジェイ・エリオット、ウィリアム・L ・サイモン = 著)より

Wayne continues, “Steve pulled out all the stops, and his presentation, in which he tag teamed with Avie, proved once again he is if nothing else the top salesman and orator in the technology business. Gassee turned up by himself without a prepared talk, ready only to entertain questions.”
メレトスキーはこう続ける。
スティーブはまったく抜かりがありませんでした。アビと組んでおこなったプレゼンテーションは素晴らしく、ほかの面がどうであるにしても、スティーブは弁が立ち、ハイテク業界のトップセールスマンだと再認識させられました。ガセーのほうは、ひとりきりで現れて、プレゼンテーションの用意をしてありませんでした。質問にこたえる準備だけだったんです」。

引用元:
(英語原著)THE STEVE JOBS WAY: iLEADERSHIP FOR A NEW GENERATION (2011) by Jay Elliot with William L. Simon; 8 Recovery
(日本語版)『ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ』(ジェイ・エリオット、ウィリアム・L ・サイモン = 著、中山 宥 = 訳)、ソフトバンク クリエイティブ株式会社;8(復活)より引用

【単語ノート】
tag-team = タッグチームを組む、タッグを組む
orator = 弁が立つ人、雄弁家、演説家

1996年、新世代OSの開発に失敗していたアップルは社外に新OSを求めることになるのですが、最終候補に残っていたOSは元アップル幹部のジャン・ルイ=ガセー率いるBe社の「BeOS」とスティーブ・ジョブズ率いるネクスト社の「NeXTstep」でした。

アップルが最終的にどちらのOSを選択するのかを決めるために、「BeOS vs. NeXTstep」、すなわち「ジャン・ルイ=ガセー vs. スティーブ・ジョブズ」のプレゼン対決を行ったところ、結果はジョブズの圧勝でした。

この引用文では、ジョブズがプレゼン対決に全力で挑んできたことが「pull out all the stops」を使って表現されていて、ここでは「まったく抜かりがありませんでした」と訳されています。

このプレゼン対決の結果、アップルは「NeXTstep」を買い取るのでなく、ネクスト社をまるごと買収することとなり、ジョブズは当時のアップルのCEOギル・アメリオのアドバイザーとして約11年ぶりにアップルに復帰することとなります。

実例2(パターン1):INSANELY SIMPLE: The Obsession That Drives Apple’s Success (2012)(邦題『Think Simple – アップルを生みだす熱狂的哲学』、ケン・シーガル = 著)より

It’s not hard to understand why a company would pull out all the stops to accomplish this.
企業がそれに全力を尽くすべき理由はよくわかる。

引用元:
(英語原著)INSANELY SIMPLE: The Obsession That Drives Apple’s Success (2012) by Ken Segall; Chapter 3 Think Minimal
(日本語版)『Think Simple – アップルを生みだす熱狂的哲学』(ケン・シーガル = 著、高橋則明 = 訳、林 信行 = 監修・解説)、NHK出版(2012/5);第3章(ミニマルに徹する)より引用

ここでは、2006年11月にリリースされたマイクロソフトのOSであるWindows Vistaと2007年10月にリリースされたアップルのMacOS X Leopardの比較を通して、ミニマル化の重要性が述べられています。

Windows Vistaには機能の異なる4つのバージョンがあって顧客は自分にどのバージョンが適しているのかを考えなければならなかったのに対し、MacOS X Leopardはバージョンが1つしかなく、そのバージョンはすべてのMacで使用することができました。また、Windows Vistaの価格には200 – 400ドルの幅あったのに対し、MacOS X Leopardは129ドルですべての追加機能を利用することができたといいます。

この本の著者は、こうした比較を通してミニマル化の重要性を説いていて、企業は「それ」(ミニマル化)に全力を尽くすべきだという内容が「pull out all the stops」を用いて表現されています。

実例3(パターン1):TRUMP : THE ART OF THE DEAL (1987)(邦題『トランプ自伝 不動産王にビジネスを学ぶ』、ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ= 著)より

He said that we should pull out all the stops to bring it to trial, and that there was a better-than-even chance we’d win.
あらゆる手を尽くして公判に持ちこむようにすれば、こちらには五分五分以上の勝ち目がある、というのだ。

引用元:
(英語原著)TRUMP : THE ART OF THE DEAL (1987) by Donald Trump with Tony Schwartz; 11 LONG SHOT The Spring and Fall of the USFL
(日本語版)『トランプ自伝 不動産王にビジネスを学ぶ』(ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ= 著、相原真理子 = 訳)、筑摩書房 (2008/2);11(大きな賭け — USFLの興亡)より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間約7分;Audible版はトランプさん本人が朗読しています。サンプルだけでも聴く価値アリです。

【単語ノート】
better-than-even = 五分五分以上の

実例4(パターン1):Life with My Sister Madonna (2008)(邦題『マドンナの素顔』、クリストファー・チコーネ/ウェンディ・リー = 著)より

Yet with me, he has pulled out all the psychological stops and has even instructed Joan to make up the bedroom next to his and hers for Danny and me.
だが、ぼくについては、父は精神的に最大限の努力をし、ジョーンに、自分たちの寝室の隣にぼくらの寝室を用意させた。

引用元:
(英語原著)Life with My Sister Madonna (2008) by Christopher Ciccone; Chapter 6
(日本語版)『マドンナの素顔』(クリストファー・チコーネ/ウェンディ・リー = 著、長澤あかね = 訳)、ぶんか社(2008/12/1);第六章より引用

【単語ノート】
psychological = 心理的な、精神的な

アメリカの歌手、マドンナの実弟クリストファー・チコーネ氏の書籍からの引用です。

クリストファー氏の父(つまりマドンナの父)は教会の助祭もつとめる厳格なカトリック教徒で、クリストファー氏の性的指向(ホモセクシャル)を知った当初はそれを受け入れられずにいたのですが、最終的にありのままのクリストファー氏を受け入れることに決め、クリストファー氏と恋人のダニーを実家に招待します。

そして、「精神的に最大限の努力をして」自分たちの寝室の横にクリストファー氏と恋人ダニーの寝室を用意させたというところが、「pull out all the stops」を用いて表現されています。

厳格な父の眠る隣の部屋との壁は薄く、音が筒抜けであることを知っていたクリストファー氏は、ダニーとともにわざとベットの上を飛び跳ねてギッコンバッタンいわせて、両親に気詰まりな思いをさせるという子供じみたいたずらをしたということです。

実例5(パターン1):Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar (2018)(邦題『大谷翔平 二刀流の軌跡』、ジェイ・パリス = 著)より

The Ohtani derby was a full-go, and major-league clubs were pulling out all the stops to get the smooth-swinging, easy-throwing Japanese star to lean in their direction.
大谷の獲得合戦が始まり、各球団は力強い打撃力と剛速球を持つ日本人スター選手を振り向かせるため、全力を尽くすこととなった。

引用元:
(英語原著)Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar (2018) by Jay Paris; CHAPTER 6 AT LONG LAST, “SHO-TIME” WAS HEADING TO THE MAJORS
(日本語版)『大谷翔平 二刀流の軌跡』(ジェイ・パリス = 著、関 麻衣子 = 訳)、辰巳出版(2019/3);第6章(”翔タイム” — メジャーデビューに向けて)より引用

【単語ノート】
derby = ダービー、競争、レース
lean = もたれる、寄りかかる;(人の気持ちなどが)傾く

 

次は、「その他」のパターン2です。

パターン2:その他

実例6(パターン2):Mariah Carey Revisited: The Unauthorized Biography HER STORY (1998)(邦題『マライア・キャリーの選択』、クリス・ニクソン = 著)より

All the stops were pulled out for this one.
いうまでもなく、これを実現するために、マライアのスタッフは最大の努力を払っていた

引用元:
(英語原著)Mariah Carey Revisited: The Unauthorized Biography HER STORY (1998) by Chris Nickson; Chapter 3
(日本語版)『マライア・キャリーの選択(マライア・キャリー Her Story 増補改訂版)』(クリス・ニクソン = 著、河村美紀 = 訳)、ヤマハ ミュージック メディア(1999/4);第3章(真のアーティストとして)より引用

「pull out all the stops」は能動態で使われることが圧倒的に多いのですが、この例文のように「all the stops」を主語にして受動態で使用されることもまれにあります。

実例7(パターン2):Never Let Me Go (2005)(邦題『わたしを離さないで』、カズオ・イシグロ = 著)より

And in the days that followed, when we had proper sex and we were really happy about it, even then, this same nagging feeling would always be there. I did everything to keep it away. I had us going at it all stops out, so that everything would become a delirious blur, and there’d be no room for anything else.
そのあと、普通のセックスをするようになり、それに大きな幸せを感じるようになってからも、その思いはいつもそこにありました。気になるそれを遠ざけておくため、わたしはあらゆることをしました。すべての抑制を取り払って、セックスに耽りました。体全体を陶酔の渦にし、ほかの何かが入り込む余地など残しませんでした。

引用元:
(英語原著)Never Let Me Go (2005) by Kazuo Ishiguro; Chapter Twenty
(日本語版)『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ = 著、土屋政雄 = 訳)、早川書房(2006/4);第二十章より引用

【単語ノート】
nagging = しつこい、やっかいな
delirious = 無我夢中の、興奮した;精神が錯乱した
blur = ぼかし、ぼやけ、かすれ、

ここでは、「pull out all the stops」が「all stops out」という形で使われていて、「すべての抑制を取り払って」と訳されています。前置詞withをつけて「with all (the) stops out(全力で)」の形で使用されることもあります。

実例8(パターン1):The Curious Casebook of Inspector Hanshichi : Detective Stories of Old Edo (2007)(日本語原著『半七捕物帳 : 時代推理小説1』、岡本綺堂 = 著)より

Ichinosuke, showing his true samurai spirit, protested, saying that even if Kisaburo was a member of his retinue in name only, he could not allow him to pay for their drinks. But Shichizo overrode Ichinosuke’s objections, assuring him that he would take care of everything; for Shichizo knew that he couldn’t very well let out all the stops if he was drinking at his master’s expense, so his plan was to get Kisaburo to foot the bill.
市之助はさすがに武家気質で、仮りにも供と名の付くものに酒を買わせる法はないというのを、七蔵は無理におさえつけて、万事わたくしに任せてくれと云った。主人の振舞ってくれる酒では羽目をはずして飲むわけにはゆかないので、彼は喜三郎をいたぶって、今夜も存分に飲もうという目算であった。

引用元:
(英語版)The Curious Casebook of Inspector Hanshichi : Detective Stories of Old Edo (2007) by Okamoto Kido, translated by Ian MacDonald; The Mountain Party
(日本語原著)『半七捕物帳 : 時代推理小説1』(岡本綺堂 = 著)、初出:1917年、光文社(2001/11);「山祝いの夜」より引用

【単語ノート】
retinue = お供、付き添い
override = (意見や要求など)を無視する、無効にする
objection = 反対、異議
at one’s expense = 〜の費用で、〜を犠牲にして、〜をだし(笑いもの)にして

Pull out all the stopsのまとめ

pull out all the stopsのイメージ画像3です。

 

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

pull out all the stops

  • 由来:パイプオルガンの音を抑制しているストップをすべて引っ張れば、そのオルガンで出すことができる最大限の音が出るようになることから。
  • 意味:全力を尽くす、全力を傾ける、あらゆる手を尽くす、最大限の努力をする
  • 英語による定義:do everything possible or make every effort to achieve something
  • 出現頻度:AA[高頻度: 高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
  • 出現パターン
    パターン1:pull out all the stops(基本型・最頻出パターン)
    パターン2:その他
  • 例文
    He was pulling out all the stops for the business.
    彼は、そのビジネスに全力を傾けていました。
    We need to pull out all the stops to win the contract.
    私たちは、その契約を勝ち取るためにあらゆる手を尽くす必要があります。

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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