「洋書に出てくる英語表現」の第52回は、フレーズ編の第39回として「see red」を取り挙げます。
- See redの意味と由来
- See redの英語による定義
- 洋書におけるsee redの出現頻度
- See redの年代分布
- See redの出現パターン
- 洋書内の実例
- 実例1:Cheating Death, Stealing Life: The Eddie Guerrero Story(2005)(邦題『エディ・ゲレロ自伝』、エディ・ゲレロ、マイケル・クラッグマン = 著)より
- 実例2:Sleeping Murder (1976)(邦題『スリーピング・マーダー:ミス・マープル最後の事件 』、アガサ・クリスティー = 著)より
- 実例3:Fifty Shades Darker (2011)(邦題『フィフティ・シェイズ・ダーカー』、ELジェイムズ = 著)より
- 実例4:Whose Body? (1923)(邦題『ピーター卿乗り出す』 ドロシー・セイヤーズ = 著)より
- 実例5:How To Win Friends And Influence People (1936)(邦題『人を動かす』、D.カーネギー = 著)より
- 実例6:Harry Potter and the Cursed Child – Parts One and Two (2016)(邦題『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部』、J.K.ローリング = 著)より
- 実例7:New Moon (2006)(邦題『トワイライトII (上・下)』、ステファニー・メイヤー = 著)より
- 実例8:THE JORDAN RULES: The Inside Story of Michael Jordan and the Chicago Bulls (1992)(邦題『マイケル・ジョーダン激闘のシーズン:誰も知らなかったNBAの内幕』、サム・スミス = 著)より
- See redのまとめ
See redの意味と由来
直訳すると「赤色を見る」となります。
ここでいう「赤色(red)」とは、闘牛で使われる赤い布のことを表しています。
闘牛士が牛の目の前で赤い布を広げると、赤色を見た牛は激しく怒り狂って闘牛士目がけて突進してくることから、「see red」は「激怒する」ことを意味する表現として広く使われるようになりました。
日本語では、「激怒する」、「カッとなる」、「腹が立つ」などと訳されます。
このように「see red」の由来を紹介してきて言うのも何ですが、牛は実際には「赤色」を見て興奮しているのではありません。牛は人間のようにはっきりと色を識別できるわけではなく、牛の目には赤色の布は白黒写真のように見えているそうです。牛は赤色そのものに反応しているのではなく、赤色の布を振って挑発している闘牛士の姿に反応しているのです。
それではなぜ闘牛で赤い布を使用するのかというと、1つは最後に無残に殺されてしまう牛の血の色を目立たなくするためです。日本のテレビ等では闘牛の真実が放送されないのでご存知ない方が多いと思いますが、牛は闘牛士とたわむれて終わりではなく、必ず最後に剣でブスブスに刺されて無残な形で殺されます。その姿があまりむごいから少しでも見た目を和らげるためか、それとも血で汚れた布を買い換えなくても良いようにするためかはわかりませんが、とにかく布に付着する血痕を目立たないようするというのが1つの理由だそうです。
そして、赤い布を使うもう1つの理由は観客の目を引きつけるためだそうで、赤色を見て興奮しているのは実は牛ではなく人間の方だということです。
闘牛のウンチクはさておき、「赤色」はいずれにしても我々人間にとって元々「怒り」や「興奮」を連想させる色ですので、とても覚えやすい表現だと言えます。
See redの英語による定義
get very angry
洋書におけるsee redの出現頻度
AA[高頻度: 高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)
See redの年代分布
1917年 – 2019年*
当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1917年発行の『His Last Bow(邦題:シャーロック・ホームズ最後の挨拶)』(アーサー・コナン・ドイル = 著)で、最も新しい洋書は2019年発行の『The Border(邦題:ザ・ボーダー (上・下))』(ドン・ウィンズロウ = 著)でした。
See redの出現パターン
see redの用法に特に出現パターンと言えるような特別な型は見当たりませんでした。
例文を挙げると次のようになります。
例文52-1)
My boss sees red every time he sees my face.
私の上司は私の顔を見るたびに怒り出します。
例文52-2)
My wife saw red and slapped me in the face when she realized that I had been cheating on her.
私が浮気していたことに気づいた時、妻はカッとなって私に平手打ちを食わせました。
例文52-3)
His arrogant attitude made me see red.
彼の横柄な態度に私は激怒しました。
洋書内の実例
それでは、実際に洋書内にみられるsee redの使用例を紹介していきます。
実例1:Cheating Death, Stealing Life: The Eddie Guerrero Story(2005)(邦題『エディ・ゲレロ自伝』、エディ・ゲレロ、マイケル・クラッグマン = 著)より
I saw red and lost it. I jumped over the rail and made straight for this jerk. Luckily for him — and for me — security broke us up before I could lay my hands on him.
怒りで我を忘れ、フェンスを飛び越えてそのろくでなしに飛びかかった。
その男にとっても俺にとっても幸いなことに、俺が手をかける前に警備員がお互いを引き離した。
引用元:
(英語原著)Cheating Death, Stealing Life: The Eddie Guerrero Story (2005) by Eddie Guerrero with Michael Krugman;CHAPTER 41
(日本語版)『エディ・ゲレロ自伝』(エディ・ゲレロ、マイケル・クラッグマン = 著、井川昌子ほか = 訳)、エンターブレイン(2006/10);第41章より引用
【単語ノート】
lose it = 自制心を失う、カッとなってきれる
rail = 柵、手すり、レール;鉄道
make straight for = まっすく〜のところに行く、〜に直行する
jerk = ろくでなし、愚か者、ばか者
security = 安全、警備
日本でも活躍したプロレスラー、エディ・ゲレロはある試合で場外フェンスにぶつかった際に、フェンス際で倒れて気を失ったふりをしていたところ、自分の体に突然何か液体のようなものがかかるのを感じたといいます。
目をあけて確認したところ、1人の男が空のカップを片手にエディを見下ろしているのが見えました。エディが断酒中であることを記事で知った観客の1人がエディにビールをかけていたのです。
試合中のエディはその男が警備員に連れ出されるのをグッとこらえて見ていましたが、最後にその男がエディを見て笑い声をあげたため、エディの我慢も限界に達します。
という流れで出てくるのがこの引用文で、「saw red and lost it」の部分が「怒りで我を忘れ」と訳されています。
実例2:Sleeping Murder (1976)(邦題『スリーピング・マーダー:ミス・マープル最後の事件 』、アガサ・クリスティー = 著)より
He just saw red and strangled her.
アースキンはカッとなり彼女を絞め殺した。
引用元:
(英語原著)Sleeping Murder (1976) by Agatha Christie; Chapter 23 – Which of Them?
(日本語版)『スリーピング・マーダー:ミス・マープル最後の事件』(アガサ・クリスティー = 著、綾川梓 = 訳)、早川書房(1977);23(彼らのうちの誰か?)より引用
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【単語ノート】
strangle = 締めつける、絞め殺す、窒息させる
実例3:Fifty Shades Darker (2011)(邦題『フィフティ・シェイズ・ダーカー』、ELジェイムズ = 著)より
“I can handle it.”
“No, you can’t, Ana. You see red whenever I mention her. My past is my past. It’s a fact. I can’t change it. I’m lucky that you don’t have one, because it would drive me crazy if you did.”
「平気だってば」
「いや、平気ではないだろう、アナ。彼女の話が出るたびに、きみの頭に血が上るのがわかる。しかしそれが私の過去だ。動かせない現実だよ。過去を変えることはできない。きみに過去がなくて、私は幸運だ。もしあったら、いまごろ私は怒りのあまり、頭がどうかしているだろう」
引用元:
(英語原著)Fifty Shades Darker (2011) by E. L. James; Chapter Six
(日本語版)『フィフティ・シェイズ・ダーカー』(ELジェイムズ = 著、池田真紀子 = 訳)、早川書房(2015/6);上巻・第6章より引用
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【単語ノート】
drive someone crazy = (人)を発狂させる
実例4:Whose Body? (1923)(邦題『ピーター卿乗り出す』 ドロシー・セイヤーズ = 著)より
I see red if anybody questions my judgment about a book.
ある本に対して、僕の下した判断に疑問を持つ奴がいれば、僕だって憤懣を感じるさ。
引用元:
(英語原著)Whose Body? (1923) by Dorothy L. Sayers; Chapter X
(日本語版)『ピーター卿乗り出す』(ドロシー・セイヤーズ = 著、小山内 徹 = 訳)、グーテンベルク21(2006/9);第四章より引用
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)
実例5:How To Win Friends And Influence People (1936)(邦題『人を動かす』、D.カーネギー = 著)より
A little questioning brought out the fact that he was continually scrapping with and antagonising the very people he was trying to do business with. If a prospect said anything derogatory about the trucks he was selling, Pat saw red and was right at the customer’s throat.
二、三質問してみると、いつも客に議論を吹っかけたり、逆らったりしていたことがわかった。売り込もうとしているトラックにちょっとでも客がけちをつけると、おそろしくいきり立った。
引用元:
(英語原著)How To Win Friends And Influence People (1936) by Dale Carnegie; PART THREE: HOW TO WIN PEOPLE TO YOUR WAY OF THINKING, 1. You Can’t Win an Argument
(日本語版)『人を動かす』(D.カーネギー = 著、山口博 = 訳)、創元社(1982/12;第2版);Part 3(人を説得する十二原則)、1(議論を避ける)より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間4分6秒
【単語ノート】
scrap with = 〜とけんかをする
antagonize = 〜に敵対する、〜の反感を買う
prospect = 見込み;見込み客
derogatory = 侮辱的な、軽蔑的な、相手の名誉を傷つけるような
この引用文では、この本の著者、デール・カーネギーの講習会にパトリック・オヘァという男が参加した時のことが書かれています。
オヘァ氏は、トラックのセールスマンを始めたものの上手くいかなかったことから講習に参加したとのことで、カーネギー氏がいくつか質問したところ、オヘァ氏は大変な議論好きで、この引用文にあるように客にすぐに議論を吹っかけることが分かりました。
議論で客を負かすものの、トラックは一台も売れなかったそうで、そうしたオヘァ氏の様子が「saw red and was right at the customer’s throat」と表現されていて、「おそろしくいきり立った」と訳されています。
この本では、「see red」が出てくるところがもう1箇所あります。
‘These people had lived in my house all winter – the most expensive part of the year,’ Mr. Farrell said as he told the story to the class, ‘and I knew it would be difficult to rent the apartment again before fall. I could see all that rent income going over the hill and believe me, I saw red.
「この一家は、わたしのアパートで冬を過していた。冬は一年中で最も経費のかかる時期だ。秋になるまでおそらく新しい入居者は見つからないだろう。つまり、わたしにしてみれば、秋までの家賃収入がふいになってしまうわけだ。わたしは腹が立った。
引用元:
(英語原著)How To Win Friends And Influence People (1936) by Dale Carnegie; PART THREE: HOW TO WIN PEOPLE TO YOUR WAY OF THINKING, 10. An Appeal That Everybody Likes
(日本語版)『人を動かす』(D.カーネギー = 著、山口博 = 訳)、創元社(1982/12;第2版);Part 3(人を説得する十二原則)、10(美しい心情に呼びかける)より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間4分6秒
ここでは、アパートを経営しているハミルトン・ファレルという人がカーネギーの講習会で話した内容について記載されています。
ファレル氏の経営するアパートに、契約期限の四ヵ月前にどうしても引っ越したいという男がいたということで、それを許すと秋までの家賃収入がふいになってしまうことから「腹が立った」という部分が「saw red」と表現されています。
実例6:Harry Potter and the Cursed Child – Parts One and Two (2016)(邦題『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部』、J.K.ローリング = 著)より
ALBUS: No! I just wish you weren’t my dad.
アルバス ちがう! ただ、僕の父さんじゃなかったらいいのに。
HARRY (seeing red): Well, there are times I wish you weren’t my son.
ハリー (怒りで我を忘れて)そうか。私も、おまえが息子じゃなかったらいいのにと思うことがある。
引用元:
(英語原著); Harry Potter and the Cursed Child – Parts One and Two: The Official Playscript of the Original West End Production; BASED ON AN ORIGINAL NEW STORY BY J.K. ROWLING, JOHN TIFFANY & JACK THORNE; ACT ONE; Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/7/18確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
)
(日本語版)『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部』(J.K.ローリング = 著、松岡 佑子 = 訳)、静山社(2016/11);第一幕より引用。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/7/18確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
)
実例7:New Moon (2006)(邦題『トワイライトII (上・下)』、ステファニー・メイヤー = 著)より
I glanced back at the house instinctively, and it seemed like the glossy red bike was all I could see. I was seeing red. My head throbbed again.
反射的にさっとうちを見やった。目に入るのは、光沢のある赤いバイクだけ。あたしの顔も怒りで真っ赤になっている。また頭がズキズキしてきた。
引用元:
(英語原著)New Moon (2006) by Stephenie Meyer; EPILOGUE — TREATY
(日本語版)『トワイライトII (上・下)』(ステファニー・メイヤー = 著、小原亜美 = 訳)、ヴィレッジブックス(2009/3);下巻・エピローグより引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験
);サンプル再生時間約6分
【単語ノート】
instinctively = 本能的に、無意識に、反射的に
glossy = 光沢のある
throb = 脈打つ、ズキズキする
実例8:THE JORDAN RULES: The Inside Story of Michael Jordan and the Chicago Bulls (1992)(邦題『マイケル・ジョーダン激闘のシーズン:誰も知らなかったNBAの内幕』、サム・スミス = 著)より
But Jordan would create a new bench insurrection with his comments after the game. The Nets had cut a 24-point deficit to 10, and Jackson had to put Jordan back in the game to stanch the bleeding. Jordan was seeing red.
しかしジョーダンは、ゲーム後のコメントで、新たな反乱を引き起こした。ネッツは24点の不足を10点にまで切り詰め、ジャクソンは出血を止めるため、再びジョーダンをゲームに投入しなくてはならなかったのだが、ジョーダンはそれに激怒していた。
引用元:
(英語原著)THE JORDAN RULES: The Inside Story of Michael Jordan and the Chicago Bulls (1992) by Sam Smith; January 1991
(日本語版)『マイケル・ジョーダン激闘のシーズン:誰も知らなかったNBAの内幕』(サム・スミス = 著、森下健一 = 訳)、徳間書店(1992/12);パート6(1991年1月)より引用
【単語ノート】
insurrection = 反乱、暴動
stanch = (出血や液体の流れを)止める
See redのまとめ
それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。
see red
- 由来:闘牛士が赤い布を広げると、赤色を見た牛が激しく怒り狂う様子から。
- 意味:激怒する、カッとなる、腹が立つ
- 英語による定義: get very angry
- 出現頻度:AA[高頻度: 高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
- 例文:
My boss sees red every time he sees my face.
私の上司は私の顔を見るたびに怒り出します。
My wife saw red and slapped me in the face when she realized that I had been cheating on her.
私が浮気していたことに気づいた時、妻はカッとなって私に平手打ちを食らわせました。
His arrogant attitude made me see red.
彼の横柄な態度に私は激怒しました。
今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。