「洋書に出てくる英語表現」の第46回は、フレーズ編の第33回として「out of the blue」を取り挙げます。
- Out of the blueの意味と由来
- Out of the blueの英語による定義
- 洋書におけるout of the blueの出現頻度
- Out of the blueの年代分布
- Out of the blueの出現パターン
- 洋書内の実例
- 実例1(パターン1):Life with My Sister Madonna (2008)(邦題『マドンナの素顔』、クリストファー・チコーネ/ウェンディ・リー = 著)より
- 実例2(パターン1):TOM CRUISE: AN UNAUTHORIZED BIOGRAPHY (2008)(邦題『トム・クルーズ 非公認伝記』、アンドリュー・モートン = 著)より
- 実例3(パターン1):Jamie Vardy: From Nowhere, My Story (2016)(邦題『人生はジャイアントキリング! ジェイミー・ヴァーディ自伝』、ジェイミー・ヴァーディ = 著)より
- 実例4(パターン1):JENSON BUTTON: LIFE TO THE LIMIT (2017)(邦題『ジェンソン・バトン自伝 ライフ・トゥ・ザ・リミット』、ジェンソン・バトン = 著)より
- 実例5(パターン1):HOW THE MIGHTY FALL: And Why Some Companies Never Give In (2009)(邦題『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』、ジェームズ・C・コリンズ = 著)より
- 実例6(パターン1):Inside Steve’s brain (2008)(邦題『スティーブ・ジョブズの流儀』、リーアンダー・ケイニー = 著)より
- 実例7(パターン1): Audrey Hepburn (1996)(邦題『オードリー・ヘップバーン[上・下]』、永井淳=訳)より
- 実例8(パターン2):The Case of the Curious Bride (1934)(邦題『奇妙な花嫁』、E・S・ガードナー = 著)より
- 実例9(パターン3):The Hollow (1946)(邦題『ホロー荘の殺人』、アガサ・クリスティー = 著)より
- 実例10(パターン4):The Catcher in the Rye (1945)(邦題『ライ麦畑でつかまえて』、J.D.サリンジャー = 著)より
- 実例11(パターン5):IT WORKED FOR ME (2012)(邦題『リーダーを目指す人の心得』、コリン・パウエル、トニー・コルツ = 著)より
- Out of the blueのまとめ
Out of the blueの意味と由来
この「out of the blue」という表現は「out of the clear blue sky」を省略したもので、直訳すると「澄んだ青空から」となります。
「澄んだ青空から」一体何が起こるのかと言うと、実はこの表現は「澄んだ青空からいきなり雷が落ちる」様子に由来しています。
通常は、澄んだ青空からいきなり雷が落ちることはなく、雲が出てきて、だんだん暗くなってきて、雨が降ってきて、風が強くなってきて、と何かしらの「前触れ」があるものですが、この表現はそのような前触れが一切なく、澄んだ青空からいきなり雷が落ちてくる様子を表しています。
こうした様子から、「out of the blue」は「突然」や「唐突に」、「何の前触れもなしに」という意味で使われ、翻訳書籍ではよく「青天の霹靂」と訳されます。
Out of the blueの英語による定義
suddenly and totally unexpectedly
洋書におけるout of the blueの出現頻度
AAA[超高頻度:極めて高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
(AAA[超高頻度]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)
Out of the blueの年代分布
1876年 – 2019年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)
当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1876年発行の『The Adventures of Tom Sawyer(邦題:トム・ソーヤーの冒険)』(トウェイン = 著)で、最も新しい洋書は2019年発行の『The Miracles of the Namiya General Store(日本語原著:ナミヤ雑貨店の奇蹟)』(東野圭吾 = 著)でした。
1800年代から使用されていて、現在も高頻度に使用されている定番の英語表現で、英会話にも使用しやすい表現と言えます。
Out of the blueの出現パターン
out of the blueの出現パターンは主に以下の5つに分類することができます。
パターン1:out of the blue(最頻出パターン)
パターン2:out of a clear sky
パターン3:out of a blue sky
パターン4:out of the/a clear blue sky
パターン5:out-of-the-blue
「Out of the blueの意味と由来」の項で説明したように、元々の形はパターン4の「out of the clear blue sky」で、その他はすべてパターン4の一部が省略されたり、ハイフンワード化したものです。
元々の表現がパターン4なのでパターン4が一番多く使われるのかといえば実はそうではなく、パターン1の「out of the blue」が圧倒的に多く使われます。
パターン1 – 5を使用頻度の高い方から順に並べると、
パターン1:out of the blue(約91%)
パターン2:out of a clear sky(約5%)
パターン5:out-of-the-blue(約2%)
パターン4:out of the/a clear blue sky(約1.5%)
パターン3:out of a blue sky(1%未満)
となり、当ブログの集計では、全使用例の約91%が「out of the blue」で、本来の「out of the clear blue sky」はわずか約1.5%にとどまりました。
このように「out of the blue」が圧倒的に多く使用され、またハイフンワードの「out-of-the-blue」を除けば、用法に違いもありませんので、パターンとしては「out of the blue」と「その他」くらいの認識でもよいと思います。
例文を挙げると次のようになります。
例文46-1)
Out of the blue, she came over and slapped me in the face
突然、彼女がやってきて僕の顔に平手打ちを食らわせた。
例文46-2)
That problem came totally out of the blue.
その問題は降って湧いたように突然やってきた。
例文46-3)
I hope you don’t mind me calling you out of the blue like this.
突然お電話して申し訳ありません。
洋書内の実例
それでは、実際に洋書内にみられるout of the blueの使用例を紹介していきます。
まずは、パターン1から紹介します。
パターン1:out of the blue(最頻出パターン)
実例1(パターン1):Life with My Sister Madonna (2008)(邦題『マドンナの素顔』、クリストファー・チコーネ/ウェンディ・リー = 著)より
A year later, out of the blue and to my great surprise, my father calls me and says, “I don’t want this to come between us. I want you in our lives. I can accept you for what you are and I love you.”
一年後、まさに青天のへきれきだったが、突然父が電話をしてきて、こう言った。「もう、この問題は終わりにしないか。わしらの人生には、お前が必要だ。ありのままのお前を受け入れるよ。お前は、わしの大事な息子だ」
引用元:
(英語原著)Life with My Sister Madonna (2008) by Christopher Ciccone; Chapter 6
(日本語版)『マドンナの素顔』(クリストファー・チコーネ/ウェンディ・リー = 著、長澤あかね = 訳)、ぶんか社(2008/12/1);第六章より引用
このブログで既に何度か紹介しているマドンナの実弟クリストファー・チコーネ氏の書籍からの引用です。
クリストファー氏は、自分の性的指向(ホモセクシャル)がマドンナと一部の兄弟を除く家族に受け入れられていないことに居心地の悪さを感じていましたが、その問題に向き合うことに決めた父から1987年のクリスマスに「お前は、ホモセクシャルなのかい?」とズバリ尋ねられます。
当時27歳で真剣に付き合っている男性がいたクリストファー氏はその通りだと認めます。
クリストファー氏の父(つまりマドンナの父)は教会の助祭もつとめる厳格なカトリック教徒であることから、きつく叱責されることも覚悟したクリストファー氏でしたが、父の反応は意外にも温かいもので、クリストファー氏はそうした父の反応に驚くと同時に、もう隠さなくてもよいと思うととても嬉しかったといいます。
しかし、その約1カ月後、父から手紙が届きます。やはり君は健康でないように思うから一度精神科医に相談してみるように、という内容でした。
1カ月もたってから父の本音が出てきたことに心底がっかりしたクリストファー氏は、僕の人生を受け入れてくれないのなら、電話も手紙もお断りだ、という主旨の事実上の絶縁をほのめかす返事を書きます。
クリストファー氏と父はその後全く連絡を取らなかったのですが、1年後に父が突然電話をかけてきたというのが上記の引用文です。ここでは突然の電話が「out of the blue and to my great surprise」と表現されていて、「まさに青天のへきれきだった」と訳されています。
実例2(パターン1):TOM CRUISE: AN UNAUTHORIZED BIOGRAPHY (2008)(邦題『トム・クルーズ 非公認伝記』、アンドリュー・モートン = 著)より
CHAPTER 9
Suddenly it was over: Out of the blue Tom was gone.
9 泥沼離婚とゲイ疑惑
「この人でなし、私のお腹にはあなたの子どもがいるのよ!」
— ニコール・キッドマン
終わりは突然やってきた。何の前触れもなく、トムは姿を消した。
引用元:
(英語原著)TOM CRUISE: AN UNAUTHORIZED BIOGRAPHY (2008) by Andrew Morton; CHAPTER 9
(日本語版)『トム・クルーズ 非公認伝記』(アンドリュー・モートン = 著、小浜 杳 = 訳)、青志社(2008/2);9(泥沼離婚とゲイ疑惑)より引用
トム・クルーズとニコール・キッドマンの別れは、2001年の年明けに突然やってきました。トム・クルーズが別れを告げることもなく、ニコール・キッドマンの前から姿を消したのでした。
ニコール・キッドマンは、代理人の弁護士を通して結婚生活の終わりを知ったということで、引用文ではこうした突然の別れが「out of the blue」で表現されています。
それにしても日本語版のタイトルの付け方が上手ですね(笑)。英語原著では単に「CHAPTER 9」と書いてあるだけなのですが、日本語版では「9 泥沼離婚とゲイ疑惑」となっていて、しかも冒頭で
「この人でなし、私のお腹にはあなたの子どもがいるのよ!」
というニコール・キッドマンの言葉が引用されています。
実例3(パターン1):Jamie Vardy: From Nowhere, My Story (2016)(邦題『人生はジャイアントキリング! ジェイミー・ヴァーディ自伝』、ジェイミー・ヴァーディ = 著)より
To this day, I couldn’t tell you what led to the incident or who was responsible for it because it just happened totally out of the blue.
どうしてあんなことが起きたのか、誰に責任があったのかはいまだによくわからない。とにかく突然だったのだ。
引用元:
(英語原著)Jamie Vardy: From Nowhere, My Story (2016) by Jamie Vardy; 3 ‘SMASH HIM ON THE ANKLE, HE’S GOT A TAG ON!’
(日本語版)『人生はジャイアントキリング! ジェイミー・ヴァーディ自伝』(ジェイミー・ヴァーディ = 著、小林玲子 = 訳)、日本文芸社(2017/3);第3章(「制御不能」でも「スジ」は通す)より引用。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/7/12確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
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イングランド・プレミアリーグのレスター・シティFCに所属するジェイミー・ヴァーディ選手は、まだサッカーで食べていけなかった頃にサッカー選手をしながらバーで店員として働いていたのですが、ある晩、そのバーで乱闘に巻き込まれます。
仲間と話しはじめた次の瞬間、気付けば誰かにグラスで殴られていたヴァーディは、トイレに駆け込んで鏡をのぞいたところ、顔はワインを浴びたように真っ赤でした。バーでは、至る所で客が殴り合いの喧嘩をしていて、ヴァーディ選手は何もしていなかったのですが、見た目のひどさからか、すぐに警察に連れ出され、パトカーに放り込まれたといいます。
幸い、警察は事情を理解してくれて手錠をかけられることはなかったのですが、結局何があったのかすら未だによく分からないそうで、その点が「it just happened totally out of the blue」、すなわち「とにかく突然だったのだ」と表現されています。
実例4(パターン1):JENSON BUTTON: LIFE TO THE LIMIT (2017)(邦題『ジェンソン・バトン自伝 ライフ・トゥ・ザ・リミット』、ジェンソン・バトン = 著)より
What do you say when a legend of motor racing calls you out of the blue? My advice is you don’t say what I did.
突然、モーターレース界の伝説的人物から電話がかかってきたら、どうすればいいか? 僕からのアドバイスは、このときの僕みたいな答え方をしないことだ。
引用元:
(英語原著)JENSON BUTTON: LIFE TO THE LIMIT (2017) by Jenson Button; PART ONE
(日本語版)『ジェンソン・バトン自伝 ライフ・トゥ・ザ・リミット』(ジェンソン・バトン = 著、児島 修 = 訳)、東洋館出版社(2019/4);第一部(父と息子の冒険の始まり)より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験
);サンプル再生時間5分
1999年のクリスマスイヴ、F1に参戦する機会をうかがっていたジェンソン・バトンのもとにある人物から電話がかかってきます。F1の名門チーム・ウィリアムズのオーナー、フランク・ウィリアムズからの電話でした。
数人の友達と地元のパブで昼間からビールを飲んでいたジェンソン・バトンは、誰かにからかわれていると思い、
「おい、冗談はやめてくれよ。誰だ?ああ、わかった。父さんだろ?」
と答えてしまいます。
こうした自身の電話対応について記載しているのが上記の引用文で、この「突然」の電話が「out of the blue」で表現されています。引用文内の「モーターレース界の伝説的人物」は、もちろんF1チーム・ウィリアムズのオーナー、フランク・ウィリアムズのことを指しています。
バトンはこの電話で、「モーターレース界の伝説的人物」の誘いに対してとんでもない回答をしてしまいます。F1で戦う準備はできているかい?というフランク・ウィリアムズの誘いに対して、「いいえ、フランク。正直、まだF1で戦う準備はできていません」と答えてしまい、お互い「メリークリスマス」と言って電話を切ってしまったということです。
この後、激しく後悔したバトンがどのようにしてF1ドライバーのシートを獲得したのか気になる方は、『ジェンソン・バトン自伝 ライフ・トゥ・ザ・リミット』をお読みください。
実例5(パターン1):HOW THE MIGHTY FALL: And Why Some Companies Never Give In (2009)(邦題『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』、ジェームズ・C・コリンズ = 著)より
“It was totally out of the blue,” Gilmartin told the Boston Globe when he learned of the steering committee’s conclusion. “I was stunned.”
「青天の霹靂だった。わたしは仰天した」と、ギルマーティンは運営委員会の結論を聞いたときのことをボストン・グロー ブ紙に語っている。
引用元:
(英語原著)HOW THE MIGHTY FALL: And Why Some Companies Never Give In (2009) by Jim Collins; STAGE 2: UNDISCIPLINED PURSUIT OF MORE
(日本語版)『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』(ジェームズ・C・コリンズ = 著、山岡洋一 = 訳)、日経BP社(2010/7);第四章(第二段階 規律なき拡大路線)より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験
);サンプル再生時間5分
【単語ノート】
stunned = 唖然として
1999年、メルク社は米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けて鎮痛剤バイオックスを発売します。バイオックスの安全性については発売当初から疑問が持たれていたのですが、バイオックスはその後順調に売り上げを伸ばし、2004年にはアメリカでの処方数が1億件に達していました。
しかし、バイオックスを服用した患者では心臓発作や脳卒中などの慢性心血管疾患の発生リスクが大きく上昇することを示す明確なデータが得られたことで、メルク社は効能拡大のために引き続き実施していた臨床試験を中止し、バイオックスを市場から自主回収します。
こうした流れで出てくるのが上記引用文で、当時のメルク社の会長兼CEO、レイ・ギルマーティンにとって、そうした安全性データは「totally out of the blue」、つまり「青天の霹靂だった」と表現されています。
実例6(パターン1):Inside Steve’s brain (2008)(邦題『スティーブ・ジョブズの流儀』、リーアンダー・ケイニー = 著)より
But while they were haggling, Garret L. Rice, a NeXT salesman, called Apple out of the blue, suggesting they take a look.
だが、価格交渉のさなか、ネクストの販売員ギャレット・L ・ライスがアップルに突然電話をよこしてきた。「ちょっと見てくれませんか」という。
引用元:
(英語原著)Inside Steve’s brain (2008) by Leander Kahney; Chapter 1 Focus: How Saying “No” Saved Apple
(日本語版)『スティーブ・ジョブズの流儀』(リーアンダー・ケイニー = 著、三木俊哉 = 訳)、ランダムハウス講談社(2008/10);第1章(フォーカス 「ノー」が救ったアップル)より引用
【単語ノート】
haggle = 論争する;値切る
1996年、新世代OSの開発に失敗していたアップルは、元アップル幹部のジャン・ルイ=ガセーが開発したBeOSの買収を計画していました。
しかし、BeOSの価格交渉を進めていた最中にスティーブ・ジョブズ率いるネクスト社の販売員から「突然」電話がかかってきます。ネクスト社のOSであるNeXTstepを「ちょっと見てくれませんか」という電話でした。引用文では、この「突然」の電話が「out of the blue」で表現されています。
ネクスト社の販売員がスティーブ・ジョブズに無断でかけたとされるこの「突然」の電話がきっかけとなって、アップルによるネクスト社の買収とスティーブ・ジョブズのアップル復帰が実現することとなります。
同じ本の第7章にも「out of the blue」が出てきます。
Why hadn’t anyone come up with a control device like this before? Schiller’s scroll wheel didn’t come out of the blue, however; scroll wheels are pretty common in electronics, from mice with scroll wheels to the thumb wheels on the side of some Palm Pilots.
なぜこのようなコントロールデバイスをそれまでだれも思いつかなかったのだろう? だが、シラーのスクロールホイールはいきなり降ってわいたものではない。エレクトロニクスの世界ではそれはごく当たり前だった。スクロールホイールつきのマウスもあれば、パームパイロットの一部モデルには側面にサムホイールがついていた。
引用元:
(英語原著)Inside Steve’s brain (2008) by Leander Kahney; Chapter 7 Case Study: How It All Came Together with the iPod
(日本語版)『スティーブ・ジョブズの流儀』(リーアンダー・ケイニー = 著、三木俊哉 = 訳)、ランダムハウス講談社(2008/10);第7章(ケーススタディ iPod誕生の経緯)より引用
ここでは、2001年10月に発表された携帯型デジタル音楽プレーヤーiPodのスクロールホイールについて記載されています。
iPodの開発にあたってスティーブ・ジョブズが下した命令は、聴きたい曲に3クリック以内でたどり着けるようにしろ、ということでした。
そのジョブズの無理難題を解決したのがスクロールホイールだったのですが、そのスクロールホイールのアイデアは「いきなり降ってわいたものではない」というところが「didn’t come out of the blue」と表現されています。このように「out of the blue」は「come」とともに用いられることが多いことも頭に入れておくと良いと思います。
特筆すべきはこのスクロールホイールのアイデアを出したのが、マーケティング責任者のフィル・シラー氏ということで、他の企業であればマーケティング担当者が製品開発会議に参加することさえないだろうと述べられています。
実例7(パターン1): Audrey Hepburn (1996)(邦題『オードリー・ヘップバーン[上・下]』、永井淳=訳)より
“Do you know what it’s like when a brick falls on your head?” she said later. “That’s how my feelings for Andrea first hit me. It just happened out of the blue.
「頭にれんがが落ちたとき、どういう感じがするかわかりますか?」と、彼女はのちにいっている。「それがアンドレアと会ったときのわたしの気持だった。いわば青天の霹靂だった。
引用元:
(英語原著)Audrey Hepburn (1996) by Barry Paris; CHAPTER 8 Roman Holiday II (1968-1979)
(日本語版)『オードリー・ヘップバーン[上・下]』(バリー・パリス = 著、永井淳=訳)、集英社(1998/5);下巻・第8章 ローマの休日II(一九六八 – 一九七九年)より引用
この引用文では、オードリー・ヘップバーンの二人目の夫、アンドレア・ドッティについて記載されています。オードリー・ヘップバーンにとって、アンドレア・ドッティとの出会いは頭にれんがが落ちてきたようで、「out of the blue」、つまり「青天の霹靂だった」と表現されています。
次は、「out of a clear sky」の形で用いるパターン2です。
パターン2:out of a clear sky
実例8(パターン2):The Case of the Curious Bride (1934)(邦題『奇妙な花嫁』、E・S・ガードナー = 著)より
“Then out of a clear sky she married this millionaire’s son?” asked Perry Mason.
“I don’t like the way you say that.”
「それがまた青天の霹靂のように、百万長者のひとり息子と結婚したというんだね?」と、ペリイ・メイスンがたずねた。
「そういう言い方は不愉快ですね」
引用元:
(英語原著)The Case of the Curious Bride (1934) by Erle Stanley Gardner; Chapter 9
(日本語版)『奇妙な花嫁』(E・S・ガードナー = 著、能島武文 = 訳)、グーテンベルク21(2004/9);第九章より引用。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/7/11確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
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(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験
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次は、「out of a blue sky」の形で用いるパターン3です。
パターン3:out of a blue sky
実例9(パターン3):The Hollow (1946)(邦題『ホロー荘の殺人』、アガサ・クリスティー = 著)より
He was always ashamed of these outbursts.
He never knew when they would come upon him out of a blue sky.
いつも彼はこうした感情の激発を恥しいとは思っていた。
だが、いつそれが爆発するか、自分でも予測がつかないのだ。
引用元:
(英語原著)The Hollow (1946) by Agatha Christie; Chapter Four
(日本語版)『ホロー荘の殺人』(アガサ・クリスティー = 著、中村能三 = 訳)、早川書房(1977);第4章より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験
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【単語ノート】
outburst = 爆発、噴出、感情のほとばしり
次は、この表現の元々の形である「out of the clear blue sky」です。
パターン4:out of the/a clear blue sky
実例10(パターン4):The Catcher in the Rye (1945)(邦題『ライ麦畑でつかまえて』、J.D.サリンジャー = 著)より
Then all of a sudden, out of a clear blue sky, old Sally said, “Look. I have to know. Are you or aren’t you coming over to help me trim the tree Christmas Eve? I have to know.”
そのとき、だしぬけに、それこそ青天の霹靂みたいにしてサリーが言ったんだよ。「ねえ。おしえてちょうだいよ。あんた、クリスマス・イヴの飾りつけを手伝いに来てくれるの、くれないの?おしえてよ」
引用元:
(英語原著)The Catcher in the Rye (1945) by J. D. Salinger; Chapter 17
(日本語版)『ライ麦畑でつかまえて』(J.D.サリンジャー = 著、野崎孝 = 訳)、白水社(1979/3);第17章より引用
最後は「out of the blue」をハイフンワード化したパターン5です。
パターン5:out-of-the-blue
実例11(パターン5):IT WORKED FOR ME (2012)(邦題『リーダーを目指す人の心得』、コリン・パウエル、トニー・コルツ = 著)より
Out-of-the-blue problem solving can grow even more complex if your organization happens to be the United States government, which — for better or worse — has long been the world’s go-to problem solver.
自分の組織が米国政府の場合、降ってわいた問題の解決はさらにややこしくなる — よくも悪くも、米国政府は世界の問題を解決してきた歴史があるからだ。
引用元:
(英語原著)IT WORKED FOR ME (2012) by Colin Powell with Tony Koltz; PART VI Reflections
(日本語版)『リーダーを目指す人の心得』(コリン・パウエル、トニー・コルツ = 著、井口耕二 = 訳)、飛鳥新社(2017/6);第6章(人生をふり返って — 伝えたい教訓)より引用
(英語原著Audible版)Audible-完全版(一冊無料!Audible無料体験
)
【単語ノート】
go-to = 頼りがいのある、主力の
このように「out of the blue」はハイフンワード化して、「突然の」という形容詞の限定用法で用いられることがあり、ここでは「降ってわいた」と訳されています。
Out of the blueのまとめ
それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。
out of the blue
- 由来:澄んだ青空から何の前触れもなしに雷が落ちる様子から。
- 意味:突然、唐突に、何の前触れもなしに、青天の霹靂である
- 英語による定義:suddenly and totally unexpectedly
- 出現頻度:AAA[超高頻度:極めて高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
- 出現パターン:
パターン1:out of the blue(最頻出パターン)
パターン2:out of a clear sky
パターン3:out of a blue sky
パターン4:out of the/a clear blue sky
パターン5:out-of-the-blue - 例文:
Out of the blue, she came over and slapped me in the face
突然、彼女がやってきて僕の顔に平手打ちを食らわせた。
That problem came totally out of the blue.
その問題は降って湧いたように突然やってきた。
I hope you don’t mind me calling you out of the blue like this.
突然お電話して申し訳ありません。
今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。