洋書に出てくる英語表現0017:Catch-22【ハイフンワード編1】

「洋書に出てくる英語表現0017:Catch-22【ハイフンワード編1】」のアイキャッチ画像

「洋書に出てくる英語表現」の第17回は「ハイフンワード編」の第1回として「Catch-22」を取り上げます。

1961年に出版された小説および1970年に公開されたその同名映画に由来する比較的新しい表現です。

Catch-22の意味と由来

このCatch-22という表現は、1961年に出版されたJoseph Hellerの戦争小説『Catch-22』に由来しています(日本語版:『キャッチ=22』、ジョーゼフ・ヘラー = 著、飛田茂雄 = 訳、早川書房1977/3)。

『Catch-22』の「Catch」は落とし穴という意味で、『Catch-22』の「22」は軍の規則番号(軍規22)を表していて、Catch-22は「軍規22の落とし穴」という意味になります。

それでは、軍規22の一体何が落とし穴なのかというと、この本の第5章に出てくる主人公ヨッサリアン(Yossarian)とダニーカ軍医(Doc Daneeka)との会話の中でその詳細が語られます。

ダニーカ軍医によると、気の狂った者がいたら飛行勤務を解くという規則があり、気の狂った人間を飛行勤務から免除するのがダニーカ軍医の義務でもありました。しかし、この規則には、「飛行勤務を免除するためには本人が軍医に願い出なければならない」という落とし穴(catch)があったのです。

つまり、気が狂っていなければもちろん飛行勤務を免れることはできませんが、気が狂っていたとしても、結局は飛行勤務を免れることができないのです。なぜならば、飛行勤務を免れるためには本人が軍医に願い出なければならず、本人が軍医に願い出た時点で自己の安全をはかるという正常な精神の働きを持っていると判断され、気が狂っているとはみなされなくなるからです。そこで、自己の安全を省みずに再び飛行勤務を行うのであればまた気が狂っているということになりますし、それを軍医に申し出るようであれば、その時点でまたまた気が狂っていないと判断されてしまい飛行勤務に参加しなくてはならなくなります。こうした堂々巡りが永遠に続いてしまうというのが「軍規22の落とし穴」、つまり「Catch-22」なのです。

1961年に小説『Catch-22』が発行され、さらに1970年には映画化されたことから、「Catch-22」という表現が「ジレンマ」や「身動きの取れない状態」を表す言葉として広く使用されるようになりました。

Catch-22の英語による定義

a dilemma or difficult situation from which there is no escape because one is trapped by a paradox

洋書におけるCatch-22の出現頻度

A[中頻度:高めの頻度で洋書に出てくる準必須の英語表現]
(AAA[超頻出]、AA[高頻度]、A[中頻度]、B[低頻度]、C[まれ]の5段階で評価)

Catch-22の年代分布

1981年 – 2014年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1981年に発行されたスティーブン・キングの『Cujo(邦題:クージョ)』で、最も新しい洋書は2014年発行の『No Place to Hide(邦題:暴露:スノーデンが私に託したファイル)』でした。

この表現のもととなった小説『Catch-22』が発行されたのが1961年で、その映画が公開されたのが1970年ですので、妥当な調査結果と言えるでしょう。

Catch-22の出現パターン

洋書によく出てくるCatch-22の出現パターンを3つ紹介します。

パターン1:It’s a Catch-22 (situation).(最頻出パターン)
パターン2:(人) is in a Catch-22 (situation).
パターン3:Catch-22.(単独で使用)

まず、パターン1ですが、このパターンでは、まずジレンマや身動きの取れない状況について先に述べておいて、その後に「It’s a Catch-22.」と付け足すもので、最もよくみられるパターンです。例えば、次のように使います。

例文17-1)
I want to start my business to earn lots of money, but I need lots of money to start my business. It’s a Catch-22.
(私は自分のビジネスを始めてお金をたくさん稼ぎたいのだけれども、自分のビジネスを始めるにはたくさんのお金が必要だ。まさにCatch-22だよ。)

このパターン1は、「It」で置き換えてはいますが、「ジレンマや身動きの取れない状況」を主語にしているパターンと言えます。

それに対して、次のパターン2はジレンマや身動きの取れない状況に陥っている「人」を主語にするパターンです。「人」を主語にする場合には、「a Catch-22」の前に前置詞「in」を置く必要があります。

パターン1と同様にジレンマや身動きの取れない状況について先に述べておいて、その後に「I’m in a Catch-22 (situation)」と付け加えることもあれば、先に「I’m in a Catch-22 (situation)」と述べてから、その状況を詳しく説明する場合もあります。例を挙げると、次のようになります。

例文17-2)
I was in a Catch-22 situation. I had to continue my business to pay the bill, but the longer I continued my business, the deeper I got into debt.
(私は身動きの取れない状態にいました。つまり、請求書の支払いを行うにはビジネスを続けなければならなかったのですが、ビジネスを長く続ければ続けるほど、私の借金は増えていったのです。)

次のパターン3は、「Catch-22」を単独でそのまま使うものです。パターン1の「It’s a Catch-22.」の「It’s a」を省略したもの、あるいはパターン2の「(人) is in a Catch-22」の「(人) is in a 」を省略したものとも言えます。

なお、いずれの場合も、Catch-22のように大文字で始まる場合もあれば、catch-22のように小文字で始まる場合もあります。

洋書内の実例

catch-22のイメージ画像2です

 

それでは、実際に洋書内にみられるCatch-22の使用例を紹介していきます。

まずは、パターン1から紹介します。

パターン1:It’s a Catch-22 (situation).(最頻出パターン)

実例1(パターン1):The Vanished Man (2003)(邦題『魔術師』、ジェフリー・ディーヴァー = 著)より

But if you’re good, if you can bring in audiences, management’ll hire you. It’s a catch-22 though. You can’t prove you’ll draw crowds if they don’t hire you, and they won’t hire you if you can’t bring in door receipts.”
それでも、実力があれば、お客を呼べれば、雇ってくれる人はいる。鶏と卵だわね。ステージに上がらせてもらえなければ、お客さんを引きつけることはできない。切符が売れるとわかっていなければ、ステージに立たせてもらえない」

引用元:
(英語原著)The Vanished Man (2003) by Jeffery Deaver; PART I. EFFECT
(日本語版)『魔術師』(ジェフリー・ディーヴァー = 著、池田真紀子 = 訳)、文藝春秋(単行本2004/10;文庫本2008/10);上巻・第1部(エフェクト)より引用
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

イリュージョニスト見習いのカーラがニューヨーク市警鑑識課員アメリア・サックスとの会話の中で自分の職業について語っている場面です。

イリュージョニストというのは、実力があって客を呼べなければ雇ってもらえない。でも、客を呼べることを証明するには、雇ってもらってステージに上がらなければならない。そのような状況を英語原文では、catch-22と表現していて、日本語では、「鶏と卵」と訳されています。

 

実例2(パターン1):New Moon (2006)(邦題『トワイライトII (上・下)』、ステファニー・メイヤー = 著)より

I was going to miss him terribly when he walked out my door. It was a nasty catch-22 — on the one hand, I wanted Alice to stay forever. I was going to die — metaphorically — when she left me.
ジェイコブがうちの玄関を出ていったら、どんなにさみしくなるだろう。救いようのない状況だ。一方ではアリスには永遠に一緒にいてほしい。アリスがいなくなったら — あくまで比喩だけど — あたしは死んでしまう。

引用元:
(英語原著)New Moon (2006) by Stephenie Meyer; 18. THE FUNERAL
(日本語版)『トワイライトII (上・下)』(ステファニー・メイヤー = 著、小原亜美 = 訳)、ヴィレッジブックス(2009/3);下巻、18. 弔いの知らせ、より引用
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間約6分

【単語ノート】
nasty = 不快な、意地の悪い
metaphorically = 比喩的な意味で( metaphoric = 比喩的な)

 

次は、人が主語になるパターン2です。

パターン2:(人) is in a Catch-22 (situation).

実例3(パターン2):TRUMP : THE ART OF THE DEAL (1987)(邦題『トランプ自伝 不動産王にビジネスを学ぶ』、ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ= 著)より

This last point would usually stir some interest, but unfortunately we were in something of a Catch-22. Until we had our financing in place, the city wasn’t interested in seriously discussing tax abatement. And without tax abatement, the banks weren’t very interested in talking about financing.
この税の話にはおおむねみな興味を示したが、残念ながらこの点で私たちは動きのとれない状態に陥っていた。銀行融資を受けるまで、市は税の軽減措置のことをまともに取りあげてくれない。だが軽減措置が認められなければ、銀行は融資に乗り気にならないのだ。

引用元:
(英語原著)TRUMP : THE ART OF THE DEAL (1987) by Donald Trump with Tony Schwartz; 6 GRAND HOTEL Reviving 42nd Street
(日本語版)『トランプ自伝 不動産王にビジネスを学ぶ』(ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ= 著、相原真理子 = 訳)、筑摩書房 (2008/2);6(グランド・ハイアット・ホテル — よみがえった四十二番通り)より引用
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間約7分;Audible版はトランプさん本人が朗読しています。サンプルだけでも聴く価値アリです。

【単語ノート】
financing = 融資
abatement = 軽減、減税

一九七四年当時、ニューヨークの四十二番通りにあるコモドアホテルは経営難に陥っていました。コモドアホテルの建物は老朽化して薄汚かったものの、立地条件には恵まれていて、ホテルの周りは毎朝、きちんとした身なりの通勤者であふれていたことから、ドナルド・トランプは再建可能と判断し、コモドアの買収を計画します。

その計画を成功させるためには、この計画がニューヨーク市にとってプラスであることを市当局に認めさせて大幅な減税措置を勝ち取らなければなりませんし、その一方で銀行からも融資を受けなければなりませんでした。そのような状況で生じたCatch-22について記載したのが上の引用文です。

市は、銀行からの融資が決まらなければ減税措置のことを真剣に検討しようとはしないし、一方の銀行はと言えば、市が減税措置を取ることが決まらなければ融資を真剣に検討しようとはしないというわけです。わかりやすいCatch-22の例だと思います。

 

実例4(パターン2):No Place to Hide (2014)(邦題『暴露:スノーデンが私に託したファイル 』、グレン・グリーンウォルド = 著)より

C. and I thus found ourselves in a Catch-22.
つまりこのとき、私たちは同じジレンマを抱えていたことになる。

引用元:
(英語原著)No Place to Hide; Edward Snowden, the NSA and the Surveillance State (2014) by Glenn Greenwald; 1. Contact
(日本語版)『暴露:スノーデンが私に託したファイル』(グレン・グリーンウォルド = 著、田口俊樹、濱野大道、武藤陽生 = 訳)、新潮社(2014/5);第一章(接触)より引用
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間約4分20秒;

 

「We were in a Catch-22」が変形した応用バージョンです。

2012年12月、この本の著者でジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏の元に、「C」と名乗る人物(エドワード・スノーデン)からあるEメールが届きました。「あなたが暗号化ソフトウェアをインストールしてくれれば、必ずあなたが興味を持つ情報を伝えることができる」という主旨のメールでした。

しかし、グリーンウォルド氏はその話を何週間もほったらかしにしてしまいました。面倒な思いをしてやっと暗号化ソフトウェアをインストールしたところで「C」から本当に興味深い情報が得られるかどうかわからないからです。そしてその状況をCatch-22と表現しています。

つまり、「C」にしてみれば、グリーンウォルド氏が暗号化ソフトウェアをインストールしてくれなければ、一切の情報を教えることができない。一方のグリーンウォルド氏にしてみれば、「C」の持っている情報が本当に興味深いものかどうかわからなければ、わざわざ暗号化ソフトウェアをインストールする気にはならない、というわけです。

この例では、「in a Catch-22」が「ジレンマを抱える」と訳されています。

 

最後は、Catch-22を単独でそのまま使うパターン3です。

パターン3:Catch-22.(単独で使用)

実例5(パターン3):Assassin’s Game (2014)(邦題『暗殺者のゲーム(上・下)』、ウォード・ラーセン = 著)より

Against this was Nurin’s countering promise — the assassination of Hamedi was his only chance to return to a normal life. Catch-22. If he killed the man, Christine would leave him. If he didn’t, Slaton would have no life to go back to. It was a collision of ultimatums, a mathematical equation that seemed unsolvable.
これと正反対なのがヌーリンの言葉だ。ハメディを暗殺する以外に普通の生活に戻れるチャンスはない。袋小路だ。もし男を殺せば、クリスティンはスラトンのもとを去る。殺さなければ、日常生活は取り戻せない。究極の利害の衝突だ。これでは回答のない方程式ではないか。

引用元:
(英語原著)Assassin’s Game (2014) by Ward Larsen; Chapter 36
(日本語版)『暗殺者のゲーム(上・下)』(ウォード・ラーセン = 著、川上琴 = 訳)、竹書房(2018/12);下巻・第36章より引用。Kindle Unlimited会員の方は¥0で読めます(2020/6/13確認)。(Kindle Unlimited 無料体験
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分;

【単語ノート】

assassination = 暗殺
collision = 衝突
ultimatum = 最後通告
unsolvable = 解決できない

 

ここでは、Catch-22が「袋小路」と訳されています。

今回紹介した実例1では、Catch-22が「鶏と卵」と訳されていて、実例2では「救いようのない状況」、実例3では「動きのとれない状態」、実例4では「ジレンマ」、そして、この実例5では「袋小路」と訳されていて、実に様々な訳語が当てられていることがおわかり頂けると思います。今回は紹介していませんが、これ以外に「不条理」と訳されることもあります。

 

Catch-22のまとめ

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

Catch-22

  • 由来:1961年に出版されたJoseph Hellerの戦争小説『Catch-22』及びその同名映画から。
  • 意味:ジレンマ、身動きの取れない状態、袋小路
  • 英語による定義:a dilemma or difficult situation from which there is no escape because one is trapped by a paradox
  • 出現頻度:A[中頻度:高めの頻度で洋書に出てくる準必須の英語表現]
  • 出現パターン
    パターン1:It’s a Catch-22 (situation).(最頻出パターン)
    パターン2:(人) is in a Catch-22 (situation).
    パターン3:Catch-22.(単独で使用)
  • 例文
    I want to start my business to earn lots of money, but I need lots of money to start my business. It’s a Catch-22.
    (私は自分のビジネスを始めてお金をたくさん稼ぎたいのだけれども、自分のビジネスを始めるにはたくさんのお金が必要だ。まさにCatch-22だよ。)
    I was in a Catch-22 situation. I had to continue my business to pay the bill, but the longer I continued my business, the deeper I got into debt.
    (私は身動きの取れない状態にいました。つまり、請求書の支払いを行うにはビジネスを続けなければならなかったのですが、ビジネスを長く続ければ続けるほど、私の借金は増えていったのです。)

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

☆☆いつも応援ありがとうございます☆☆
にほんブログ村 英語ブログ 洋書・洋楽の英語へ
にほんブログ村

英語ランキング