洋書に出てくる英語表現0016:「pedestrian(歩行者)」には「●●●」という意味がある【第2・第3の意味編3】

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「洋書に出てくる英語表現」の第16回は「第2・第3の意味編」の第3回として「pedestrian」を取り上げます。

「pedestrian」のpedは、自転車のペダル(pedal)のpedや、ペディキュア(pedicure)のpedと同じく、「足」という意味で、みなさんご存じの通り、pedestrianは「歩行者」を意味します。

マイクロソフト社の製品は「歩行者」??

それでは、次の文章を見て下さい。

They are very pedestrian and the sad part is that most customers don’t have a lot of that spirit either, but …

これは1995年に行われたスティーブ・ジョブズの有名なインタビューからの引用で、そのインタビューの中でもこの部分は特に有名です。

インタビュアーから「マイクロソフトについてはどうですか? (What about Microsoft?)」、「彼らはどうやって成功したんでしょう? (How did those guys do that?)」と聞かれた後にジョブズが返したとても長い回答の中の一文です。

今回は、そのインタビューを対訳形式で全文掲載した『スティーブジョブズ 1995 ロスト・インタビュー』という書籍からの引用なのですが、この部分は他の書籍にもよく出てきます。

このインタビューが行われた1995年当時といえば、スティーブ・ジョブズがキャリアのどん底にあった頃です。自身の熱心な説得によってペプシコ社から引き抜いてきたジョン・スカリーによって1985年にアップル社から追放されたジョブズは、アップルへの復讐を胸にネクストコンピュータ社を設立しますが、ネクスト社の製品は全くと言っていいほど売れず、1993年には自社工場を閉鎖して、大幅なレイオフを行っていました。

その一方で、1986年にジョブズがジョージ・ルーカスから買収していた経営難のコンピュータグラフィックス部門(ジョブズが「ピクサー」として法人化)も、「トイ・ストーリー」などの大ヒット作を連発する前で赤字を垂れ流していた頃でした。まさに八方塞がりといったところです。

一方のマイクロソフトはというと、アップルのOSを模倣したWindows OSの大成功で完全に市場を支配していました。

つまり、このインタビューが行われた1995年というのは、マイクロソフト社とビル・ゲイツは「勝ち組」で、アップル社とスティーブ・ジョブズは「負け組」ということが誰の目にも明らかになっていた頃で、そういった状況下での「What about Microsoft?」だったわけです。

そして、その長い返答のごくごく一部が「マイクロソフト社の製品はpedestrian」というわけです。

そうです。この文章で「pedestrian」は「歩行者」ではなく「平凡な」とか「ありふれた」という意味で使われています。書籍の中では次のように「凡庸」と訳されています。実にぴったりな表現だと思います。

I have a problem with the fact that they just make really third rate products. Their products have no spirit to them. Their products have no spirit of enlightenment about them. They are very pedestrian and …(略)
私が気に入らないのは、マイクロソフトが作っている製品が三流品だという事実なんだ。マイクロソフトの製品には魂がない。人にひらめきを与えるスピリットがない。じつに凡庸だと思う

引用元:
スティーブジョブズ 1995 ロスト・インタビュー』、講談社(2013年9月)
STEVE JOBS: THE LOST INTERVIEW
(インタビューの英語原文と日本語訳の両方を1冊に掲載)
(Blue-ray・DVD)スティーブ・ジョブズ1995~失われたインタビュー~
(prime video)スティーブ・ジョブズ1995~失われたインタビュー~(字幕版)

この他にも、スティーブ・ジョブズはこのインタビューの中で「マイクロソフトは美意識に欠けている」や「マイクロソフトはいうなればマクドナルド」といった強烈なコメントを残しています。

当時としては負けず嫌いの敗者が語る妬みと負け惜しみ以外の何物でもなかったのですが、その後のスティーブ・ジョブズのアップルへの電撃復帰とアップルの大成功を知っている今となっては、これらの言葉は負け惜しみから来たのではなく、心から語っていたのだなと納得できますね。

ということで、pedestrianは「歩行者」以外にも、「平凡な」とか「ありきたりな」という意味で使われます。

pedestrianの英語による定義

boring and lacking imagination

洋書におけるpedestrianの出現頻度

AA[高頻度: 高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]

pedestrianは、「歩行者」という意味で洋書に高頻度に出現するだけでなく、「平凡な、ありふれた」という意味でも洋書に高い頻度で出現します。

pedestrianの年代分布

1942年 – 2018年*
(*当ブログで調査した1813年以降の洋書約1000冊のなかで、当該英語表現の使用が確認された洋書の発行年の範囲)

当ブログで調査した1813年以降に発行された約1000冊の洋書のなかで、当該表現の使用が確認された最も古い洋書は、1942年発行の『Mythology(邦題:ギリシア神話 )』(エディス=ハミルトン = 著)で、最も新しい洋書は2018年発行の『Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar(邦題:大谷翔平 二刀流の軌跡)』(ジェイ・パリス = 著)でした。

もちろん、「歩行者」という意味でのpedestrianであれば1800年代の書籍にも多数出現するのですが、私の調査した限り、「平凡な」という意味での使用は1800年代の書籍にはみられませんでした。

pedestrianの出現パターン

特に出現パターンと言えるようなものは見当たりませんでした。

ただ、注意しなければならないのは、「歩行者」という意味で使用する場合は、名詞としても、「 pedestrian walkway(歩行者用通路)」のように形容詞としても使えるのに対し、「平凡な、ありきたりな」という意味で使う場合は基本的に形容詞として使用し、「He is a pedestrian(彼は平凡な人間だ)」のように名詞としては使用しないということです。

洋書内の実例

それでは、実際に洋書内にみられるpedestrianの使用例を紹介していきます。

最初に最も古い使用例を紹介します。

実例1:Mythology (1942)(邦題『ギリシア神話』、エディス=ハミルトン = 著)より

Both Ovid and Apollodorus tell this story. Apollodorus lived probably more than a hundred years after Ovid. He is a very pedestrian writer and Ovid is far from that.
この物語はオヴィディウスとアポロドロスによって語られている。アポロドロスはたぶんオヴィディウスよりおよそ百年以上後に生きた詩人だが、ひどく単調な作家で、オヴィディウスのほうがずっと優れている。

引用元:
(英語原著)Mythology (1942) by Edith Hamilton; Part Two: Stories of Love and Adventure, Chapter IV: Four Great Adventures, Daedalus
(日本語版)『ギリシア神話』(エディス=ハミルトン = 著、山室静、田代彩子 = 共訳)、偕成社(1980/7);愛と冒険の物語、四人の大冒険家、4 ダイダロスより引用
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

四人の大冒険家の一人としてダイダロス(Daedalus)が紹介されている箇所からの引用です。ろうで付けた羽根で空高く飛び立ったものの、太陽の熱でろうが溶けて墜落死したイカロス(Icarus)の話はみなさんご存じだと思いますが、そのイカロスにろうで羽根を付けたのがここで扱われている父のダイダロスです。ここでは、そのダイダロスのことを語っているアポロドロスのことを「a very pedestrian writer(ひどく単調な作家)」と表現しています。

次は最も新しい使用例です。

実例2:Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar (2018)(邦題『大谷翔平 二刀流の軌跡』、ジェイ・パリス = 著)より

That’s far from a pedestrian performance for any rookie, but especially one arriving with the hype that accompanied Ohtani.
これは一般的な新人選手とはかけ離れた成績であり、いくら大谷の前評判が高かったとしても、驚きを禁じ得ない。

引用元:
(英語原著)Shohei Ohtani: The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar (2018) by Jay Paris; CHAPTER 12 OHTANI INCHES HIS WAY BACK TOWARD THE MOUND
(日本語版)『大谷翔平 二刀流の軌跡』(ジェイ・パリス = 著、関 麻衣子 = 訳)、辰巳出版(2019/3);第12章(マウンドヘ戻るために)より引用

【単語ノート】
rookie = 新人
hype = 誇大広告、過剰な宣伝

北海道日本ハムファイターズから大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに移籍した大谷翔平選手は、1年目の2018年にいわゆる二刀流として、投打の両方で活躍しましたが、6月8日に右肘の故障のため故障者リストに登録されました。上記英文はその故障までの前半戦の成績について語ったものです。

ちなみに、この本の中で大谷選手の「二刀流」は「 two-way player」のように「two-way」という形容詞を使って表現されています。

実例3:STEVE JOBS: THE BIOGRAPHY (2011)(邦題『スティーブ・ジョブズ』、ウォルター・アイザックソン = 著)より

They put a pedestrian cloak on a device that should be magical in all of its aspects.
あらゆる面で魔法のような装置にありふれたカバーをかけてしまっていたのだ。

引用元:
(英語原著)Steve Jobs (2011) by Walter Isaacson; CHAPTER FORTY TO INFINITY The Cloud, the Spaceship, and Beyond
(日本語版)『スティーブ・ジョブズ(I・II)』(ウォルター・アイザックソン = 著、井口耕二 = 訳)、講談社(2011/10-11);第39章(無限の彼方へ さあ行くぞ! クラウド、宇宙船、そのまた先へ)より引用
(英語原著Audible版)Audible版-完全版一冊無料!Audible無料体験);サンプル再生時間5分

【単語ノート】
cloak = 覆い隠すもの、マント

2010年に発売されたiPadですが、多くの人がiPadをケースに入れていたために、iPadのせっかくの美しいラインが隠されていただけでなく、薄さが売りのiPadがケースによって分厚くなっていました。そういった流れで出てくるのが上の文章で、iPadという魔法のような装置に「 pedestrian cloak」、すなわち「ありふれたカバー」をかけてしまっていたとのことです。

ちなみに、この問題点に関しては、ジョブズが見つけた磁石に関する論文を参考にして、現在よく使われているようなiPadの前面に磁石で貼り付ける脱着式のカバーを開発することで解決したとのことです。

実例4:The Rampage of Haruhi Suzumiya (2011)(日本語原著『涼宮ハルヒの暴走』、谷川流 = 著)より

However, this pedestrian moment of peace didn’t last long, as trouble, afraid of being forgotten, has a habit of rearing its ugly head on a regular basis.
しかし、そんな小市民的平和は長く続かず、厄介ごとはまるで忘却されるのを恐れるがごとく周期的に訪問してくるのだった。

引用元:
(英語版)The Rampage of Haruhi Suzumiya (2011) by Nagaru Tanigawa; English translation by Chris Pai ; THE DAY OF SAGITTARIUS
(日本語原著)『涼宮ハルヒの暴走』(谷川流 = 著)、角川書店(2004/10);射手座の日、より引用

ここでは、「小市民的」という日本語がpedestrianと訳されています。これも、すごくぴったりな翻訳だと思います。

また、「 rear its ugly head」という表現にも注目です。これは、日本語の「頭をもたげる」に非常に近い表現で、単に意味が近いというだけでなく、用法的にも近いものがあります。「rear its ugly head」は、日本語の「頭をもたげる」と同様に、疑念や恐怖、愚かさ、エゴといった人間の心の中にあるネガティブな一面や普段は隠れている問題点などを主語にとって、それが時々現れてくるという意味で使います。

例えば、

Ego sometimes rears its ugly head when people handle their money.
(人がお金を扱う時には、時としてエゴが頭をもたげてくる)

のように使います。もちろんですが、次のように主語が複数になればits headはtheir headsになります。

 

Unexpected problems sometimes rear their heads when people handle their money.
(人がお金を扱う時には、時として予期しない問題が頭をもたげてくる)

 

pedestrianのまとめ

それでは、最後に以上の内容をまとめておきます。

pedestrian

  • 意味:「歩行者」以外にも、「平凡な」や「ありきたりな」という意味で使われます。
  • 英語による定義:boring and lacking imagination
  • 出現頻度:AA[高頻度: 高い頻度で洋書に出てくる必須の英語表現]
  • 出現パターン:特に出現パターンと言えるようなものは見当たりませんが、「平凡な」という意味で使用する場合は基本的に形容詞として使用します。

今回は、以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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